御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
愛しさが加速してこのままずっと抱きしめていたかったが、困らせたくもないので手を離した。

うつむいてしまった彼女に焦る。

「ごめん、嫌だった?」

「ち、違うんです」

慌てたように上げた彼女の顔は耳まで赤かった。

「うまく言えないんですけど、宏斗さんの腕の中は心地よくて安心できて、でもドキドキして胸が苦しいし、偽物の立場で触れていいのかと――あっ、私、なに言ってるんだろう。あの、お腹空いてますよね? ご飯、すぐによそいます」

彼女がリビングの方へと勢いよく踵を返した。

その拍子に足がもつれて転びそうになっている。

細いウエストに片腕を回して支えると、ますます彼女の顔が赤く色づいた。

「どんくさくてすみません!」

走ってリビングに戻る後姿にまた胸が高鳴る。

(君が欲しいと言ったら頷いてくれるだろうか?)

先ほどの言動から考えると脈ありな気はするが、確信は持てない。

スキンシップに戸惑っていたのは、宏斗をひとりの男性としてではなく兄の親友という目で見ているからではないだろうか。

それならばゆっくりと攻めた方がいい。

そう思うのに、早く手に入れたいという欲望を抑えられる自信がなかった。
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