御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
憧れに手が届く
翌日は土曜日で、渚は乾いた洗濯物を自室でたたんでいた。

「渚ちゃん、行ってくる」

宏斗の声で急いで廊下に出ると、凛々しいスーツ姿の彼が玄関に向かっている。

今日は出勤ではなく、霞が関で知人に会うと言っていた。

詮索してはいけない気がして頷いただけだったが、政府機関が集中しているエリアだ。

(知人って政府で働く人なのかも。宏斗さんは私が想像できないような世界を知ってるんだろうな。尊敬する)

玄関まで見送る。

「渚ちゃん、今日の予定は?」

「窓拭きをしようと思っています。他はないです」

「いつも家事をしてくれてありがとう。頑張りすぎないでね。十五時くらいに帰れると思う」

「はい、わかりました。いってらっしゃい」

宏斗が革靴を履いたので出ていくと思ったのに、振り向いて「こっちに」と言われた。

戸惑いつつ半歩前に出ると、微笑した彼が腕を広げた。

「えっ? あの……」

「ハグで見送ってほしい」

驚いてたちまち鼓動が早鐘を打つ。

「昨日言ってた練習ですか?」
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