御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
彼が使っているシャンプーの香りがほのかにして、温もりや筋肉のたくましさも伝わってくる。

かつてないほど彼を感じて心臓が壊れそうなほどに波打った。

(どうしよう、私……)

恋にならないように耐えるのも限界に近い。

必死で葛藤している渚の気持ちに気づかない彼は楽しそうだ。

(宏斗さんはなんとも思ってなさそう。そうだよね、相手が私だもの。意識してもらえるはずがない……)

「カメラのレンズを見て、笑って」

耳元で聞こえた響きのいい声に、頬にかかる息。

シャッター音がして、鼓動が最高潮に高まった瞬間が切り取られた。

見せられた写真の宏斗は凛々しくて美しく、それに対して渚は――。

緊張とときめきと葛藤が交ざり合う、ぎこちない笑みを浮かべていた。

水族館を満喫したあとはお洒落なカフェでパスタを食べ、雑貨とファッションのテナントを少し見て展望台に上がった。

天気がいいので遠くまでよく見えた。

限りなく広がる街並みを大パノラマで楽しんでから地上に降りると、宏斗が腕時計に視線を落とす。

時刻は十五時半だ。そろそろ帰るのかと思ったが、次の提案をされる。

< 72 / 222 >

この作品をシェア

pagetop