御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
老舗デパートを出ると、空が夕焼けに染まっていた。

友人のフランス料理店はこの近くにあるそうで、大通りを西へと進む。

ヒールの高いパンプスを履き慣れていないので足元に気をつけながら歩いていると、それに気づいた宏斗が渚に向けて肘を張った。

「お姫様、どうぞ」

腕に掴まらせてもらうと、エスコートされているような気分になる。

通行人の視線がチラチラと、宏斗だけでなく渚にも向けられているのに気づいた。

(シンデレラになったみたい。魔法が解けたらいつもの私に戻るけど、それまでは宏斗さんの隣で夢を見てもいい?)

高まる動悸がおさまらない。

心がどんどん恋へと押し流されていく。

どうしたら引き返せるのかわからなくて、彼のジャケットの袖をぎゅっと掴んだ。

「そのビルだよ」

デパートのワンブロック先の商業ビルに入る。

一階には有名なチェーン店の居酒屋とイタリアンレストラン、お洒落なバーが看板を掲げている。

入口の壁に社名の書かれたプレートが並んでいるので、飲食店だけでなく企業も入っているようだ。

エレベーターを待っていると、宏斗のジャケットの内ポケットからバイブ音がした。

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