御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
婚姻中に暴力を振るわれた時の記憶が蘇り、恐怖で体が強ばる。

足に踏ん張りがきかず、ずるずると引きずられて室内に連れ込まれた。

強い焦りの中、ドアが閉まる寸前に誰かの手がドアの縁にかかるのが見えた。

その直後に勢いよく開けられて、肩で息をする宏斗が飛び込んできた。

きっと助けを求める渚の声が届いていたのだろう。

上昇するエレベーターが五階で止まったのを確認したあと、階段を駆け上がってきたのではないだろうか。

呼吸が乱れていても間髪入れずに渚を奪い返し、両腕で強く抱きしめてくれた。

「宏斗さん、宏斗さんっ……!」

焦りと恐怖から解放されて涙があふれる。

「ひとりにしてすまなかった。もう大丈夫だよ。泣かないで」

「な、なんだよ、お前は」

繁史が驚き戸惑っている。

渚には優しい声をかけてくれた宏斗が、険しい顔で急に声を低くした。

「岩淵繁史だな。これは立派な犯罪行為だぞ」

「妻と話し合おうとしていただけだ。大袈裟な言い方をするな」

「昨年に離婚が成立しているのを忘れたのか? 渚は俺の妻だ」

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