御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
両手で包むように頬に触れられ、男の顔をした彼がゆっくりと唇を近づけてくる。

「俺の渚」

色気を含んだ囁き声が唇にかかる。

胸の高鳴りを抑えようとする必要はなくなった。

至近距離で視線を絡め、唇が触れ合う瞬間に目を閉じる。

優しく触れて、強く押し当てられ、唇を割って深くまで味わわれる。

背中に回される腕がゆっくりと上下して思わず身をよじると、キスがさらに深くなった。

「んっ……」

唇の隙間から洩れた自分の甘い声が恥ずかしい。

すると急に両肩を掴まれて体ごと離された。

「ごめん。これ以上すると歯止めが効かなくなる」

「あっ……」

言われている意味はわかるので、沸騰しそうなほど顔が火照った。

「渚を困らせたくないから我慢するよ」

前髪をかき上げながら立ち上がった彼が、蠱惑的な流し目を送ってきた。

「今夜だけはね」

(そ、それって……)

「シャワーを浴びてくる」

恥ずかしいけれど嬉しくて、彼がリビングを出ていってからも動悸が鎮まらない。

(今日一日で一生分の幸せをもらった気分――あっ、宏斗さんが戻ったらすぐに食べられるように早く夕食を作らないと)

明日も明後日も、この先もずっと彼のために料理ができる。

そう思うとまた泣いてしまいそうなほどに嬉しくて胸が震えた。
< 90 / 222 >

この作品をシェア

pagetop