御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
二十五パーセントへの引き上げが発表された時から昨日まで、宏斗は競合他社の国内自動車メーカーの経営陣や日本政府と意見交換をしていた。

無謀な関税引き上げが実現するならアメリカの工場や販売店舗の閉鎖や移転を辞さないという強気な姿勢を示し、実際に工場ひとつの稼働を停止させた。

すると他社も少し遅れて同じような方針を打ち出した。

もちろん日本政府も水面下でアメリカ政府と交渉してくれていたはずだが、ISSIKIの迅速な対応が流れを変えたと今朝の経済紙で評価されていた。

「また発言を変えてくる可能性もありますので、引き続き日本政府や他社と意見交換を続ける所存です」

「お前に任せる。頼んだぞ」

冷静な真顔を崩していないが、内心では父からの信頼を感じて気が昂っていた。

会議を終えて執務室に戻ろうとしていると、ドア前で呼び止められた。

「宏斗、話があるのよ」

隣に並んだのは副社長を務める母親だ。

若い頃はファッショ誌のモデルをしていたそうで、五十九歳の今でもスリムな体形を維持している。

先ほどの会議で母はひと言も発せず、飾り物のようだった。

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