娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
「いじめ……そんなことしないよ」

杏奈は慌てて起き上がった。

朱音の登場で甘い空気は一瞬で消え、あっという間に現実に引き戻された。

おまけに照れくさくて蓮斗の顔をまともに見られない。

「ママー」

まだ眠いのか、朱音が目をこすりながら駆け寄ってくる。

「朱音、ママ、大丈夫だよ。いじめられてないよ」

杏奈は朱音を膝の上に座らせて、言い聞かせた。

「ほんと? でも、泣いてる」

朱音は心配そうに杏奈を見つめると、目尻に残る涙を小さな手で拭った。

杏奈の涙を初めて見て、びっくりしているようだ。

「朱音、優しいね。ありがとう。ママ、いじめられてないよ」

「ほんと? 蓮斗君、いじめてない?」

振り返り疑いの目を向ける朱音に、蓮斗は「ないない。いじめてないよ」と焦った声をあげる。

滅多なことでは動じない蓮斗も、朱音には弱いらしい。

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