娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
涙がこぼれる前に、杏奈は急いで声をかけた。

「別の店舗に行くのか?」

驚く蓮斗に、杏奈はコクリとうなずいた。

「突然ごめんね。でも、そんなに遠くないから」

目的地はここから車で二十分ほどの郊外にある、杏奈が来月早々の異動を控えている本社の近く。

「いつものお店よりプリンがいっぱいあるよ。限定プリン」

「ほんと?」

飛び上がる朱音の隣で、蓮斗が戸惑いながら杏奈を見つめていた。




都内にあるひかり食堂の多くは商業施設に入っているが、現在杏奈が勤務している店舗以外にも路面店が二店舗ある。

そのひとつがひかり食堂を運営するささゆきの創業者の生家を改築してひかり食堂一号店としてオープンした店舗だ。

本社から歩いて五分の閑静な住宅地にある、レンガ造りの外壁と黄色い屋根が印象的な店舗で、ひかり食堂を代表する、旗艦店ともいえる。

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