娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
ここは覚悟を決めて、精一杯がんばるしかない。

「本社はすぐそこだし、引っ越しはしなくてよさそうだな」

「はい。今みたいに通勤時間一分というわけにはいきませんけど、今の家にそのまま、ですね」

それにプロジェクトは軌道にのるまでの限定的なもので、プロジェクトの解散後は現在在籍している勤務地に戻されるそうだ。

「朱音もせっかく幼稚園に慣れたのに、転園させるのはかわいそうだから。異動といってもこの程度でよかったです」

「ママ、朱音って言った?」

口をもぐもぐさせながら、朱音が顔を上げた。

「あ、ううん、なんでもないんだけど……朱音が幼稚園で楽しそうでよかったねって話してたのよ」

杏奈はデミグラスソースまみれの朱音の口もとをペーパーで拭いながら、クスリと笑った。

「幼稚園、楽しいよ。慎太君と一輪車で競争するの、すごく楽しい」

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