娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
五十歳くらいだろうか。

小柄な体に上品なデザインの紺色のワンピースがよく似合っている。

「誰?」

駒田が眉をひそめ、蓮斗に問いかける。

「弥生さん?」

「忘れ物を届けに降りて来たら、飛んだ場面に出くわしたわね」

蓮斗に弥生さんと呼ばれた女性は、固い表情を崩さず、杏奈たちを見やる。

意志が強そうな大きな目、そしてまっすぐ伸びた背中。

凜とした佇まいからは高貴な雰囲気が漂っていて、実際よりも大きく見える。

「忘れ物?」

蓮斗は首をかしげ、弥生に近づいた。

「これだ、これ。社員証を忘れるとは、次期社長としてなってないぞ」

「父さん……」 

「忙しいから来なくていいと言ってるのに、無理をして来るからだ。俺のことより仕事に集中しろ」

弥生に続いて、見覚えのある男性が現われた。

蓮斗の父親だ。

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