娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
顔立ちもスタイルも、相変わらず蓮斗に似ているが、五年ぶりに見る姿は療養中だとはいえかなり老けている。

白髪が増え、肌の色も悪い。

なにより痩せていて、上下グレーのスウェットが、ひどく大きく見える。

そこに以前の周囲を威圧するような押しの強さは、まったく感じられない。

「わざわざありがとうございます」

蓮斗は父から社員証を受け取り無造作にポケットにしまい込んだ。

どうやら今まで父親の病室に顔を出していたようだ。

「いや、弥生さんと中庭に散歩に行くつもりだったからちょうどよかった」

蓮斗の父は弥生と顔を見合わせ、微かに微笑んだ。

蓮斗の話ではふたりは子どもの頃からの許嫁同士だったらしい。

長い付き合いのせいかまとう空気や仕草がそっくりで、お似合いの夫婦だ。

「それより」

蓮斗の父は駒田に視線を向けると「年寄りの茶番に付き合わせて悪かったな」と声をかけた。

「いえ」

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