月が青く染まる夜に
受変電室をあとにした私と片桐さんは、事務所へ戻って二人で今日の作業の最終確認表をファイルに閉じた。

長い長い大きな仕事が、やっと終わった。
長い長い一日も、もう終わる。
そう思える瞬間だった。

人気もまばらになってきたところで、私は彼女にコーヒーを淹れた。
ブラックコーヒーを飲みながら、デスクにもたれて片桐さんが

「ねぇ、佐藤さん」

と切り出してきた。

外部用の入館証はいつの間にかくるくると丸められていて、彼女の首にはかかっていない。
そのせいか、距離が近くなる。

「本日はありがとうございました。工程管理も、迅和のことも、ちゃんと、見ていてくれましたね」

すごく、深い言葉だったけれど、それには触れずに笑みを返す。

「いえ、片桐さんやみなさんのおかげです」

「そうじゃなくて」と、彼女は小さく首を振る。

「しっかり止めてくれたの、あなただもの」

一瞬、言葉に詰まる。
感情を入れるべきか迷い、違う選択をした。

「…総務判断です」

「……そういうことに、しておきましょうか」

少しだけ笑う彼女は、からかいでも意地悪でもない、どこか柔らかい雰囲気でコーヒーを飲んだ。


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