2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
「先ほども言っただろうが。この扉ひとつを隔てて、俺の世界とお前の世界は繋がった」
「ああ……言ってたっけ……。でもなんで?」
「誰にも知られぬ誰も知らぬ願えば開かず願わずとも開く――俺たちの部屋を繋ぐ扉に隔離結界の術式が彫られているのだと思う」
「……術式ねぇ。魔法とか言っちゃったりする?」
「少し違うが似たようなものだな。魔法は自然界を構成する要素に基づくもので、紋様術を含む魔術は、人が潜在的に有している魔力と自然界に置ける五大要素を融合してより効果的に発動させるための計算式を明文化した――」
「うう、許容できる理解を超えたよ……」
「そうなのか? 理がちがうだけだろう」
「理ねぇ……。科学みたいなものかなー」
「かがく、とは、お前が先ほどから弄くっているそれか?」
「そう」
凛子はタッチパネル式のスマートフォンの液晶画面を胡乱に見る。
科学技術の結晶とも言えよう。
デジタル数字が示す時刻は午前五時。
夏の夜が明けるのは早い。
しかし太陽が姿を現す気配は無い。
そうして、嫌でも目に飛び込む圏外の文字に、凛子は諦観せざるを得なかったのだ。
「それが白い光を放っている原理は俺も判らないが、お前の世界では当然のことなのだろう?」
「まぁそうだけどさ」
ごろんと横になって、タオルケットをひっぱりあげると、肩肘をたてた体制で、こちらを見下ろしているシェイルと目が合う。
「その術とかでちゃっちゃと元に戻らないの?」
「俺が構成した計算式ではないからな。解析するのに少々時間が要る」
「……あんたの部屋と繋がっちゃったって現実は…………認めるよ」
こうなったらとことん現実的になってやるけど。
凛子はシェイルから、見慣れた天井へと視線を移す。
気持ちだけでも、体を休ませておいた方がいい。
とんだ週末になりそうだ。
水道、ガス、電気。
ライフラインの復旧は絶望的。
ついでに、食料もだ。
何が悲しくて住み慣れた自分の部屋でサバイバルを意識しなければいけないのだろうか。
現実ってヤツは小説か何かのように、気を失って、おしまい。という訳にはいかないらしい。
「言っておくけど……この貸しは大きく付くからね!」
凛子の言葉に、シェイルは刹那だけ瞠目し、吹き出す。
「何がおかしいのよ」
「いや……。そうだな。必ず借りは返そう。ヴェイル・シェイル・ガーランド・エレ・ラ・アゼリアスの名に於いて、空間の共有者リィンに約束する」
間の抜けた表情を返す女にシェイルは、またひとつ笑いを落とし、瞳を閉じる。
狭い空間。
安っぽい寝具の感触。すぐそこに感じられる、見知らぬ存在の呼吸。
だがしかし、不思議と不快ではない。
稀代の術師によって創り上げられたこのどこにも属さぬ狭間が、暫しの休息を自分に齎すであろう予感さえある。
こうして、彼女にとって憂慮に塗れた週末の始まり――彼にとっては強制的に与えられた休暇の始まりが告げられた。
「ああ……言ってたっけ……。でもなんで?」
「誰にも知られぬ誰も知らぬ願えば開かず願わずとも開く――俺たちの部屋を繋ぐ扉に隔離結界の術式が彫られているのだと思う」
「……術式ねぇ。魔法とか言っちゃったりする?」
「少し違うが似たようなものだな。魔法は自然界を構成する要素に基づくもので、紋様術を含む魔術は、人が潜在的に有している魔力と自然界に置ける五大要素を融合してより効果的に発動させるための計算式を明文化した――」
「うう、許容できる理解を超えたよ……」
「そうなのか? 理がちがうだけだろう」
「理ねぇ……。科学みたいなものかなー」
「かがく、とは、お前が先ほどから弄くっているそれか?」
「そう」
凛子はタッチパネル式のスマートフォンの液晶画面を胡乱に見る。
科学技術の結晶とも言えよう。
デジタル数字が示す時刻は午前五時。
夏の夜が明けるのは早い。
しかし太陽が姿を現す気配は無い。
そうして、嫌でも目に飛び込む圏外の文字に、凛子は諦観せざるを得なかったのだ。
「それが白い光を放っている原理は俺も判らないが、お前の世界では当然のことなのだろう?」
「まぁそうだけどさ」
ごろんと横になって、タオルケットをひっぱりあげると、肩肘をたてた体制で、こちらを見下ろしているシェイルと目が合う。
「その術とかでちゃっちゃと元に戻らないの?」
「俺が構成した計算式ではないからな。解析するのに少々時間が要る」
「……あんたの部屋と繋がっちゃったって現実は…………認めるよ」
こうなったらとことん現実的になってやるけど。
凛子はシェイルから、見慣れた天井へと視線を移す。
気持ちだけでも、体を休ませておいた方がいい。
とんだ週末になりそうだ。
水道、ガス、電気。
ライフラインの復旧は絶望的。
ついでに、食料もだ。
何が悲しくて住み慣れた自分の部屋でサバイバルを意識しなければいけないのだろうか。
現実ってヤツは小説か何かのように、気を失って、おしまい。という訳にはいかないらしい。
「言っておくけど……この貸しは大きく付くからね!」
凛子の言葉に、シェイルは刹那だけ瞠目し、吹き出す。
「何がおかしいのよ」
「いや……。そうだな。必ず借りは返そう。ヴェイル・シェイル・ガーランド・エレ・ラ・アゼリアスの名に於いて、空間の共有者リィンに約束する」
間の抜けた表情を返す女にシェイルは、またひとつ笑いを落とし、瞳を閉じる。
狭い空間。
安っぽい寝具の感触。すぐそこに感じられる、見知らぬ存在の呼吸。
だがしかし、不思議と不快ではない。
稀代の術師によって創り上げられたこのどこにも属さぬ狭間が、暫しの休息を自分に齎すであろう予感さえある。
こうして、彼女にとって憂慮に塗れた週末の始まり――彼にとっては強制的に与えられた休暇の始まりが告げられた。