どうやら飼い慣らされていたのは、わたしの方だったようです

7.どうすればいいのか

 ジャックが目を離している隙に、引き出しの取っ手にかぎしっぽをかける。すーっと引っ張ったら見事に引き出しを開けることに成功した。

 そっと小さな箱を取り出す。肉球で撫でても、やはりなめらかなベルベットの感触は心地いい。
 爪を差し入れて箱を開けようとする。やっと開くと思ったところで、首根っこを掴まれた。

「こーら」
 くるりと振り返れば、困ったように眉を下げたジャックがいた。

「大事なものだって、言ったろ。ったく」
 言葉の割に声音がやさしいのはわたしが猫だからか。

「最初に見せる人は決めてたんだけど。まあ、お前にならいっか」

 わたしを膝に乗せて、ジャックはゆっくりと箱を開ける。

 小さな青い石がはまった指輪が、そこに鎮座していた。長い指が愛おし気にゆっくりとそれをなぞる。

「鍛冶屋のおやっさんに無理言ってさ、指輪の作り方教えてもらったんだ。なかなかうまいもんだろ」

 そのまま彼は指輪をかざすようにして見つめた。ふわりとやわらかな銀色の光を湛えて、指輪は輝いている。

「あの日、せんせいに渡すつもりだったんだ」

 そこで、胸の奥をぎゅっと掴まれて気がした。

「大人になったら相手にしてもらえるかと思ったんだけどな。これがなかなか難しくてさ」

 ジャックが十八歳になったのはほんの二か月ほど前のこと。この時は、ささやかながら二人で彼の成人のお祝いもした。

「おれのこと、どう思ってるんですかね」

 整った顔立ちが歪んで、泣き笑いのようになる。何度も何度も見た。泣き出す少し前のジャックの顔。

「聞こえてるなら、そろそろ出てきてくれませんか」

 何もない空に低い声が吸い込まれていく。

「なあんてな。猫のお前に言ってもしょうがないけど」

 聞こえている。ちゃんとここで聞いているけれど。

「どうすればいいのか、分からないの」
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