どうやら飼い慣らされていたのは、わたしの方だったようです
「にゃーにゃー!」

 訴えは空しくもただの猫の鳴き声に変わる。ジャックは節くれだった手で、わたしの首根っこを掴んだ。

「お前、せんせいの行き先知らない?」

 困ったようにジャックが笑って、問うてくる。わたしは今、あなたの目の前にいるというのに。

魔女集会(サバト)は次の満月だから、まだ先だろー? どこに行ったのかな、せんせ。行き先ぐらい教えてくれればいいのに」

 そっと寝台の上に戻されたかと思うと、わしゃりと頭を撫でられる。

「って、猫が知ってるわけないか。ごめんな」

 機嫌を取るように、その大きな手はわたしの全身を撫でていく。猫になってしまったからか、ジャックの手がひどく大きく感じる。

「ちょっと探してみるかな」

 すっとジャックが立ち上がる。そうされると長身はひどく遠くに感じた。
 とん、と寝台の上からわたしは降りる。けれどこの体はしなやかで軽い。

「にゃー」

 広いジャックの背中に、いつの間にか声をかけていた。といっても、それはただの猫の声だけれど。

「ん? どうした」

 屈んでジャックはわたしと目線を合わせるようにする。見つめ合えば、涼やかな目元がふっとやわらかくなる。

「お前も、置いていかれたのか」

 端正な顔立ちに少しだけ憂いが宿る。あやすように三角の耳の裏を撫でられる。その感触がなんともたまらなくて、わたしは甘えるように頭をすり寄せてしまった。

「おれと来る?」

 差し出された手に、恐る恐る肉球を乗せてみる。するとジャックは猫のわたしを片手で軽々と抱き上げた。

「いいよ。じゃあ、一緒に行こっか」

 出会った頃はわたしが抱え上げられるぐらい小さかったのに。この子はいつの間に、こんなに大きくなったんだろう。

「さーて、どこから探すかな」

 部屋を簡単に片づけながら、ジャックはそう呟いた。
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