魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意
「あら陛下、ごきげんよう」

「どういうことだ」

「どういう意味でしょうか。どうしてここに?」

「…………はぁ」


黒色の艶やかな髪をかきあげて、ため息吐くヴィクトール。
暗闇の中でもしっかりと視線が合うため彼は夜目がきく、もしくは暗闇でも平気なようだ。


「声が聞こえていた。毎晩、君の声が……」

「……!」

「最近は昼間にもな。そこでここではないかと……」


ヴィクトールは手のひらで額を抑えて俯いてしまった。
どうやらシャルレーヌが話しかけていた声は、テネブルを通じて届いていたようだ。
最近は昼間もデネブルがここに来ていたため、シャルレーヌの声がそのまま彼に届いていたらしい。

(まさかそんなことがあるなんて……困りましたわ)

テネブルは申し訳なさそうに小さく震えた後、シャルレーヌの背後に隠れてしまった。
どうやらテネブルはそんなつもりはなかったようだ。
自然に伝わってしまったらしい。

(とりあえずは余計なことを言わずに正解でしたわね。言ってないわよね? わたくし、デネブルをかわいがっていただけですし……)

テネブルと共に寄り添いつつ、彼への愛を伝えてかわいいと囁いてばかりしていたような気がする。
その声が毎日、彼にも届いていた。
それを裏付けるかのようにヴィクトールの耳はほんのりと赤くなっている。
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