魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意
シャルレーヌはゆっくりと顔を上げた。
彼の紫色の瞳が鋭くこちらを睨みつけていた。


「一つお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……なんだ?」

「わたくし以外のサンドラクト王国の者が、この子に触れたことはないのでしょう?」

「…………」


沈黙は肯定ととるべきだろうか。
帝国の人間は闇魔法に触れないことは常識なのだろうが、魔法を使わない者が触れたことはないのだろう。


「でしたら、わたくしがおかしいと決めつけるのは早計ではありませんこと?」


ヴィクトールは尚も不機嫌そうにこちらに視線を送り続けている。


「それにテネブルは陛下に遊んでもらえず、寂しくてここにいるだけですわ。昔はよく遊んで差し上げていたのでしょう? 暗闇の中で……」

「────ッ!」


シャルレーヌの口角がゆっくりと上がっていく。
するとヴィクトールがどこから取り出したのか短剣を抜いた。
彼の表情は怒りに満ちている。しかしシャルレーヌは笑みを崩さなかった。

その瞬間、微かに金属が擦れる音が聞こえて首筋に短剣の剣先が向けられた。
ロミとルイが動き出そうとするのをシャルレーヌは片手で止めた。

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