魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意
「くっ……!」

「……ふふ」


もう少しで皮膚を突き破る、そんな時だった。
テネブルがプルプルと震え出し、ガバリとシャルレーヌの頭を覆うように被さってしまった。
シャルレーヌは手を離してしまい、カランカランと短剣が床に落ちた。

(残念……テネブルに邪魔されてしまいましたわ)

視界は真っ暗の闇の中、ひんやりと冷たいものが顔を包み込む。
いつまで経っても離れてくれないため、呼吸ができないと軽くテネブルを触れる。
何度か叩いてアピールすると、ずるずると這いずるようにして離れてくれた。


「ぷはっ……! 苦しいですわ。もう、テネブルは少々強引なところがありますわね」


テネブルは触手をブンブンと横に振っており、シャルレーヌのことを心配しているようにも見えた。
それを見たヴィクトールは目を見開いたまま固まっている。
テネブルの行動に何か思うところがあったのかもしれない。


「あらあら、かわいい子」

「…………」

「ふふっ、びっくりしたのよね。ごめんなさいね」


テネブルは怒っているのか、今度は触手を縦に揺らし始めた。
ヴィクトールはいつのまにか短剣を拾い上げて、シャルレーヌに警戒するような視線を送っているではないか。
シャルレーヌは何事もなかったかのように髪を整えていた。
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