魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意
やはりこのことを妃たちに知られるのは面倒なのだ。
ヴィクトールもそれが想像できたのか顔が曇っていく。


「早くお戻りになられてはいかがしょうか」

「言われなくても出ていく」

「邪魔で……そうしてくださいませ」

「…………」


シャルレーヌの失言に何も返すことはないようだ。
不機嫌そうな表情は相変わらずだが、敵意はないらしい。
ただ値踏みするようにこちらを見つめているヴィクトールに微笑みを返すことしかできない。

(テネブルはまたここに来るでしょうね。陛下まで頻繁にここに来られてはたまりませんわ)

シャルレーヌの気持ちとは違い、こちらにどんどんと近づいてくるヴィクトール。
何を考えていると思いきや、そのまま顎を持ち上げられた。


「…………陛下?」


暗闇で光るアメジストのような瞳が、首元を見つめている。


「怪我はないようだな」

「え……?」

「先ほどは悪かった」


シャルレーヌは大きく目を見開いた。
先ほどとは短剣を向けたことを指しているのだろう。
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