魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意
挨拶の際にやりすぎてしまったのか、ここ数日はアナベルもエマニュエルも大人しいままだ。
たまにナタリーがシャルレーヌの部屋の前に立っているとルイから報告を受けていた。
ロミとナタリーは黙ったまま見つめ合うだけ。
ベアトリスは建前上のお見舞いの品をロミに渡したそうだ。
そのカゴにはメモで注意書きのように、己の身の振り方を考えるようにと書き込まれていた。
優しさというよりはこれ以上引っ掻き回すのはやめてくれという牽制のようなものだろう。
(アナベル様もエマニュエル様もわたくしが動かないから接触できないだけなのでしょうけど)
あとは定期的に医師がやってきては『日の光を浴びましょう』『食事をきちんととりましょう』と促してくることくらいだ。
ヴィクトールとも顔を合わせていない。
動物と意思疎通できる魔法の力を持つモルガンは、小鳥やネズミを使役しようと頑張っている。
情報収集の大半を彼やカラスたちが担っていたのだろう。
だからこそヴィクトールも簡単には動けなくなってしまったというわけだ。
そしてもう一人の側近、オノレは筋トレをしつつ己の仕事をこなしていた。
彼を見ていると安心するのはサンドラクト王国出身だからだろうか。
今ならばモルガンが情報収集ができていない。
(つまり……動くなら今しかないということですわよねぇ?)
それにもうすぐ煩わしい診察の時間になってしまう。
(食事に日光浴を勧められるのはもうたくさんですわ)
シャルレーヌがため息を吐いて、今日は彼らにどう対策するのかを考えていた。
すると遠くから響く慌ただしい複数の足音。明らかに医師たちではなさそうだ。
(なんだか楽しそうなことが起こりそう……ウフフ)
シャルレーヌはわくわくしつつ、扉の外でロミが動き出そうとするのを合図を送って制する。
ルイも暗闇の中で頷いていた。