魔力0の訳あり王女、最狂につき取り扱い注意

(何をするのかと思いましたけれど、ただ水をかけて去っていくだなんて! しかも主人の名前も……あぁ、どうしましょう)

抑えようとしても笑うのを止められそうになかった。

(サンドラクト王国だったら、間違いなくその場で殺されるでしょうに……)

こうして自由に動き回り、子どものいたずらのようなことをして去っていく。
それがおかしくてたまらない。


「ああ、ゾクゾクしちゃう……こんな気持ち初めて」


魔法を使えるということは、貴族の令嬢だ。
アナベルの元に行儀見習いに来ているのか、または彼女が正妃になることを望んで仕えているのかもしれない。


「ウフフ、なんてかわいらしい嫌がらせですこと!」

「…………」

「血が流れないなんておままごとみたいね。おかしいわ、ゴホッ」


笑い過ぎたのかシャルレーヌは何度も咳き込んでいた。
ルイが慌てて水を持ちに行く。


「捕らえますか?」

「何もしなくてもいいわ。そのうち手に入るから」

「…………」


しかしロミは不満そうに眉を寄せた。


「このままでいいのよ。彼女たちには十分楽しませてもらったもの。そのまま泳がせておきましょう」

「かしこまりました」

「それにもうすぐ医師たちが来るでしょう?」


ロミはシャルレーヌの言いたいことを理解したのだろう。
納得したのか丁寧に腰を折ると、水分を拭おうとしていた布を引く。
シャルレーヌの笑い過ぎて溢れ出てくる涙を拭った。


「窓を開けてくれるかしら?」

「よろしいのですか?」

「風で少しはシーツが乾くといいけれど……フフッ、いつまで保つのかしらね」

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