顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして
「なるほど」
セオは静かに頷いた。
「つまりグレンソン公爵は、リーヴス侯爵の嘆きに心を動かされ――その結果として、禁じられた転移魔法に手を出し、謀反に至った、と」
「む、謀反など……!」
グレンソン公爵の唇が引き攣った。
どう取り繕おうと、処罰は免れない。それはこの男自身が一番よくわかっているはずだ。
今、あの頭の中では凄まじい速さで計算がなされているのだろう。どの罪を認め、どの罪を他人に押しつければ、最も軽い処分で済むのか。
しかし、セオに逃がす気はない。
「ふっ……あはははは! 私がカティアとラピスを道具のように使う?」
盛大に笑い飛ばしたかと思えば、一瞬にして笑みが消える。
「ふざけるな」
次の瞬間、セオの全身から放出された魔力が、周囲を圧倒した。
空気が震え、大地が軋む。風が渦巻き、砂が巻き上がる。
「なるほど。貴様の主張によれば、私は愛する人もその子も幽閉し、国のために使い潰す人でなしであると。――そこまで非道な男だと思われているのなら、それ相応の覚悟もあろう」
セオが一歩、グレンソン公爵に近づく。
「今、この場で貴様の首を斬り落としたところで、誰も文句は言うまい」
「なっ!? 全て推論ではございませぬか! 証拠もなしに首を刎ねるなどと――法では」
「法に縛られ、お前の首を刎ねる気概すらない男と見くびられては心外だ」
グレンソン公爵が周囲を見回しても、もはや味方はどこにもいない。
なにを言ったとしても、この王は揺るがない。
セオが剣を振り上げてみせてようやく、そのことを悟ったのだろう。
「愛する人とその家族に手を出された王の怒り知れ……!」
「……っ」
全てを諦めるように、グレンソン公爵は力なくがくりと跪いた。