顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして
エピローグ

最高に幸せな結婚式を


 ――それから。

 グレンソン公爵は投獄された。屋敷に調査が入ると、次から次へと罪状が積み上がっていった。様々な貴族を脅迫し従わせていた証拠に始まり、他国の貴族と内通していた書簡まで発見されたのだ。

 偽の『星の子』とその母アビゲイルを仕立て上げ、王家を欺いた罪。カティアの誘拐と『星の子』誘拐未遂。禁忌の転移魔法の使用――それらが重なり、グレンソン公爵は早々に極刑となった。

 公爵家の人間もほとんどが処罰の対象となり、当然、アビゲイルもその中に含まれている。『星の子』の母を騙った罪は重く、彼女もすでに処刑されていた。

 ただ、アビゲイルの子とされたロニーだけは助けられた。
 あの子供はそもそもアビゲイルとも血の繋がりがなく、セオと髪や瞳の色が似ているというだけで、他国から攫われてきた子供だという事実がわかったのだ。攫われた際に両親も命を落としており、帰る場所もないという。

(……なんて、ひどいことを)

 幼い子供を道具のように扱い、本当の家族を奪っておきながら、利用価値がなくなれば捨てるつもりだったのだ。

 それでもロニーは幼いながらに利発で、公爵家での厳しい躾にも耐え抜いた子だった。
 さる商家が養子に迎えたいと名乗りを上げてくれ、無事に引き渡されることとなった。どうか温かい家庭の中で、のびのびと育ってほしいと心から願う。

 そして、父のことだ。
 リーヴス侯爵は、カティアとラピスを攫おうとした実行犯である。しかし、グレンソン公爵に欺かれていたという事情が認められ、情状酌量の余地ありとの判断が下された。

 本来であれば降爵は免れないところだったが、グレンソン公爵の捕縛に際して調査に全面的に協力したこと、さらにカティアを王家に迎え入れるにあたって実家の位を落とすべきではないという声も多くあがったことで、侯爵位は維持されることになった。

 カティアに対して厳格すぎるところはあったが、優秀な男であるとは誰もが認めていたらしい。擁護の声は、カティアが思っていたよりもずっと多かったのだという。

 もっとも、リーヴス侯爵本人は到底納得していないようだった。
 自らの罪は自ら償うべきだと頑として主張し、転移魔法の後遺症もなく五体満足であるからには、今後は王家のために身を粉にして働くと誓ったのだとか。

(……お父様らしい)

 その頑固さに呆れながらも、少しだけ笑ってしまう。
 そして後日、改めて父との話し合いの場が設けられた。

 かつてカティアに厳しすぎたこと。悪い噂を鵜呑みにし、つらく当たりすぎたこと。勘当などという取り返しのつかない判断を下してしまったこと――父は、ひとつひとつ、不器用に言葉を選びながら謝罪してくれた。

 ――そして。

「お前の『夢喰』の力に助けられた。――ありがとう」

 初めてだった。
 父が御印を認めてくれたのも。感謝の言葉をくれたのも。

 嬉しくて泣いてしまったのは、内緒だ。
 ――こうして、カティアは改めてリーヴス侯爵令嬢として、セオの元へ嫁ぐこととなる。

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