顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして
「陛下……?」
突然のことに、あの冷静なレスターですら驚いたように目を見張る。
これは。これは一体なんだ。
セオは己の中に湧き上がった突然の感覚を、解釈しきれない。
一秒、二秒――十秒ほど経ってようやく、その意味を本能的に理解した。
「産ま、れた……?」
ぽつりと呟いた言葉に、レスターもフロゥですら、怪訝な表情をする。
「どうしたんスか、陛下。いきなりワケのわからないこと言ってますけど」
「産まれた! 産まれたんだ!!」
「は?」
この衝撃を上手く言葉にできなくて、同じ単語を繰り返す。
「陛下。申し訳ございませんが、我々は読心術の心得がございません。フロゥの頭でも理解が可能なように、お言葉を整理していただけると大変助かります」
「おい! オレを巻き込むなよ!!」
フロゥのツッコミは無視して、レスターが真っ直ぐこちらを見つめてくる。
その凍てつく眼鏡の波動を向けられ、ようやくセオも頭が回転しはじめる。
「だから――」
信じられないことが起こった。
でも、この感覚は間違いがない。
「『星』が、教えてくれたんだ」
心臓がずっと、バクバクと鼓動している。だって。そんな。あのたった一夜で――。
「俺と血を分け合う『星の子』が、誕生した」
「え?」
「は?」
さすがにレスターもフロゥも硬直する。
言葉にすると、セオ自身どんどん実感が湧いてきて、震える拳をぎゅっと握り込んだ。
「イヴしか、ありえない」
「そんな」
「イヴが、俺の子を、産んで……?」
ぐるぐると、言葉にならない感情が体内を駆け巡る。
たった一夜にして、彼女を妊娠させていた?
であれば、今、イヴはどこでなにをしている。こんなに探しているのに、どうして見つからない。焦燥感ばかりが押し寄せ、セオは叫んだ。
「っ、――探せ!」
いても立ってもいられなかった。
セオはバン!と机に両手を打ちつけ、ふたりに命じる。
「どんな手段を使ってでも! 必ずイヴを見つけだせ! 次代を担う『星の子』がこの国のどこかに産まれたんだ! 母子ともに、絶対に無事に探し出すんだ!」