顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして

(2)『星の子』


 さて、無事に今日も店が開店した。

 開店直後は、カティアの守り袋が入荷していないかと開店待ち客がパラパラ来るくらいで、わりと穏やかだ。
 ランチ時や、昼下がりの穏やかな時間にふらりと訪れる客が増える。外の街から来た観光客も多く、物珍しげに土産物を物色していた。

 そして事件は、カフェタイムを終えた日が落ちる前の時間に起きた。

 この時間になると、近所の子供たちが裏の公園に集まってくる。いや、公園と呼ぶには小さすぎる、商店やアパルトメントに囲まれた裏庭のような場所だ。けれど、この商店街に住む子供たちにとっては大事な遊び場だった。

 ラピスも近所の子たちに混じる形で、遊びに参戦するのが日課だ。地域の皆で見守っているから、安心して遊ばせられるのだけれども――。

「ノーラ、大変だ! カティアさんは――あ! いた!」

 十歳くらいの男の子が慌てて裏口から飛び込んできた。その男の子は必死でカティアの腕を掴み「来て!」と裏口へ引っ張っていく。

「え!? なに!?」
「ラピスが……!」

 瞬間、なにか事故!? と顔面蒼白になる。

「行っておいで!」

 ノーラの呼びかけに頷き、すぐさま雑貨屋を出た。
 裏口を飛び出すと、裏庭のようなひらけた場所が目に入った。
 小さな公園の中央にラピスがいて、自分より年上の男の子たちを睨みつけている。
 肌を刺すような異質な気配に、カティアの心臓が嫌な音を立てた。

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