顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして
(2)『夢喰』の呪い
「この親不孝者め! 私にとんだ恥をかかせおって……!」
パンッ!と頬を打たれた痛みで、カティアはその場に崩れ落ちた。
最悪の卒業式を終え、それでも胸を張って自宅へ戻った。
自分は誰にも恥じぬ成績で卒業をした。父であるリーヴス侯爵だって望んだ結果のはず。だから堂々と報告へやってきて、これだ。
「お前が完璧でないからだろう!? 変な噂を立てられおって!」
容赦のない平手打ちに、ヒリヒリと痛む頬を手で押さえる。
「全く! 家紋に恥じぬ存在であれといつも言っているというのに」
リーヴス侯爵家の家紋は冬菩提樹(リンデン)の葉に天秤だ。清廉と公正をなによりも重んじ、王家に忠を尽くしてきたことこそが、この家の誇りである。
なのに、卒業式でのあの騒ぎ。
予想していた反応ではあった。
厳しい父のことだ。これまで一度も褒めてもらえたことなどなく、どれだけ努力し、結果しようとも、提示されるのはもっと高い目標のみ。
父の提示する目標に向かってひとつひとつ結果を積み重ねていれば、いつかは――と思っていたけれど。
(やっぱり、駄目だった)
心の奥がずしりと重くなる。覚悟はしていたはずなのに、父親の言葉は想定以上にカティアの心に深く刺さった。
期待していないと言えば嘘だったのだ。
皆が納得せずとも、カティアの主席はまごうことなき事実だ。だから、外野の声など気にすることなく、カティアが勝ち得た結果を見てひとこと言ってくれたらよかった。
『よく頑張ったな』――と。
王太子の婚約者に内定してから、来る日も来る日も王妃教育に身を投じた。学校の課題だけでなく、この国を統治するにあたって歴史や文化、貴族たちの資料を頭に叩き込むだけでは足りない。諸外国の言語やマナーを学び、外交、内政、どの分野でも活躍できるようにと精一杯尽くしてきた。
それもこれも、王太子妃になりたいからではない。父親が望んだからだ。
立派な王太子妃になれば、父が褒めてくれると思った。本当にそれだけを夢見て、こつこつ学んできた。
なのに父親はカティアを冷たく見下ろし叱責するばかりだ。
パンッ!と頬を打たれた痛みで、カティアはその場に崩れ落ちた。
最悪の卒業式を終え、それでも胸を張って自宅へ戻った。
自分は誰にも恥じぬ成績で卒業をした。父であるリーヴス侯爵だって望んだ結果のはず。だから堂々と報告へやってきて、これだ。
「お前が完璧でないからだろう!? 変な噂を立てられおって!」
容赦のない平手打ちに、ヒリヒリと痛む頬を手で押さえる。
「全く! 家紋に恥じぬ存在であれといつも言っているというのに」
リーヴス侯爵家の家紋は冬菩提樹(リンデン)の葉に天秤だ。清廉と公正をなによりも重んじ、王家に忠を尽くしてきたことこそが、この家の誇りである。
なのに、卒業式でのあの騒ぎ。
予想していた反応ではあった。
厳しい父のことだ。これまで一度も褒めてもらえたことなどなく、どれだけ努力し、結果しようとも、提示されるのはもっと高い目標のみ。
父の提示する目標に向かってひとつひとつ結果を積み重ねていれば、いつかは――と思っていたけれど。
(やっぱり、駄目だった)
心の奥がずしりと重くなる。覚悟はしていたはずなのに、父親の言葉は想定以上にカティアの心に深く刺さった。
期待していないと言えば嘘だったのだ。
皆が納得せずとも、カティアの主席はまごうことなき事実だ。だから、外野の声など気にすることなく、カティアが勝ち得た結果を見てひとこと言ってくれたらよかった。
『よく頑張ったな』――と。
王太子の婚約者に内定してから、来る日も来る日も王妃教育に身を投じた。学校の課題だけでなく、この国を統治するにあたって歴史や文化、貴族たちの資料を頭に叩き込むだけでは足りない。諸外国の言語やマナーを学び、外交、内政、どの分野でも活躍できるようにと精一杯尽くしてきた。
それもこれも、王太子妃になりたいからではない。父親が望んだからだ。
立派な王太子妃になれば、父が褒めてくれると思った。本当にそれだけを夢見て、こつこつ学んできた。
なのに父親はカティアを冷たく見下ろし叱責するばかりだ。