顔も知らない婚約者様の御子を一夜で授かりまして
「――ふん」
グレンソン公爵は燭台の残り火を見つめ、忌々しげに目を細めた。
そもそも、『星』が代々王になるという仕組みそのものが、気に入らない。
『星』の加護を持つ者が生まれれば、その者が次の王になる。この国は建国以来、その掟に従ってきた。
『星』の力が土地を豊かにし、民を潤し、国を繁栄させる。――それは事実だ。否定するつもりもない。
(だが、それは王の資質とはまた別の話だろう)
王とは国を統べる者だ。なにに金を注ぎ、なにを切り捨てるべきかを正しく見極められる者こそが、玉座に座るべきではないのか。
自分ならば、あの力でもっと稼げる。もっと巨大な富を生み出せる。他の国に威光を指し示せる。
なのにこの国は『星』の御印だけをありがたがり、それを国の頂に据え続けている。
「愚かしい」
まるで豊作の神を担いで王座に座らせているようなものだ。そんな存在を、わざわざ政の中心に置く必要がどこにある。
『星』の力は確かに凄まじい。それは認めよう。
だが――だからこそ、本来は資源として扱うべきなのだ。
そして、それをできるのは自分しかいない。
(あの情だのなんだのに煩い王族になにができる。馬鹿らしい)
いい王だと持ち上げられているが、それは『星』の御印のせいで民が盲信しているだけ。
加護があるだけで善王と呼ばれるなど、憎たらしい。
なぜ誰も気付かないのだろう。『星』の力によって土地が豊かになりすぎれば、作物の価格はどうしても下がる。保存の技術はまだまだ発達しておらず、輸出にも限界がある。
であるならば、『星』そのものを貸し出した方が、ずっと効率がよいのではないだろうか。
痩せた土地に悩む他国は少なくない。そこに『星』、ないしは『星の子』を一定期間派遣し、土地を活性化させる。その対価として莫大な貸与料を得る。
(『星』は、この大陸における最上級の取り引き材料になる)
国ひとつを潤す力を持つ存在。それを玉座に縛りつけておくなど、なんという無駄遣いか。
もっと有能な人間が――つまり、自分のような人間が王座につき、『星』を資源として運用すれば、この国の利益は今の比ではない。
『星』は『星』で、神の子とでもなんでも箔をつけて、適当に飾り付けておけばいい。そうすれば、本人も満足ではないだろうか。
――そう思い、長い年月をかけて王家を内側から食い潰してやろうと画策してきたのに。
そうだ。運良く先王が毒で倒れ、寝たきりになった頃――いや、正確には、そうなるよう仕向けた頃から、ずっと陰から手を回してきたのだ。
先王がいなくなれば、あとはお人好しの若造ただひとりだ。どうとでもできる。
アビゲイルが国王を籠絡できれば御の字。無理であっても、ロニーが七つになるまでには猶予があった。時間をかけて、じわじわと内側から侵食すればいい。弱ったところを掌握する。それが、もっとも確実な筋書きだった。
しかし、国王の、一夜の相手に対する執念、執着。そして、真の『星の子』が先に国王の手のもとに下ったことが全てを狂わせた。