約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「ごめんなさい和葉さん……」

 深く頭を下げて謝罪する里菜を前に、和葉はすぐに言葉を返せなかった。

 少しの沈黙のあと静かに口を開く。

「……頭を上げて、里菜さん」

 促された里菜はゆっくりと顔を上げたけれど、その表情には依然として申し訳なさが滲んでいる。

「ありがとう、話してくれて……」
「謝って許されることじゃないのは分かってる……けど、私には謝ることしか出来ないから……」

 絞り出すような声でそう告げる里菜を前に和葉の心は複雑だった。

 里菜が自分たちを探るような真似をしていたことは事実だけれど、その経緯を聞けば簡単に責めることも出来なかったから。

 どう言葉を返すべきか迷っていたそのとき、

「和葉」

 聞き慣れた声に振り向くと湊が二人の元へ歩いて来るところだった。

「湊さん……」

 和葉が名を呼ぶと湊は彼女に一度視線を向けてから里菜へと向き直る。

「大内さん」
「は、はい……」
「すみません、先程の話は全て聞かせてもらいました」
「……そう、ですか」

 里菜が気まずそうに視線を落とす中、湊は落ち着いた口調で言葉を続けていく。

「貴方に一つ、頼みがあります。聞いていただけますか?」
「私に出来ることがあれば……何でも言ってください」
「今から君嶋さんをここへ呼んでもらえますか?」
「え……?」

 思いがけない頼みに里菜は目を見開いた。

「本人に直接話をしないと、この先も何をしてくるか分かりませんから、もうここで終わりにしたいんです。私が直接話をしたがっていると伝えてもらって構いません。お願い出来ますか?」
「…………分かりました」

 里菜は小さく頷くと鞄からスマートフォンを取り出して梓沙へ連絡を取り始める。

 その様子を見ていた和葉は隣に立つ湊を見上げた。

「湊さん……」
「大丈夫だ、俺に任せてほしい」

 不安を察したのか湊は安心させるように和葉の顔を見つめた。

「きちんと話をして、これ以上何も出来ないようにするしかないんだ」
「……そうですね……」

 和葉は不安を拭いきれないまま、それでも湊の言葉を受け入れるように頷いた。

「和葉は千宙たちと一緒に別の場所で待っているか?」
「いえ、私も一緒に会います」
「……分かった。じゃあ千宙に詩音たちを連れて近くのファミレスで待つように伝えてくるよ」
「はい」

 和葉の意思を尊重するように頷くと湊は千宙たちのいるほうへと歩いていった。
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