約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 翌朝、朝食を済ませた湊と和葉は詩音に話があること伝えると、三人並んでソファーに腰を下ろした。

 二人の真ん中にちょこんと座った詩音は不思議そうに首を傾げる。

「おはなしってなぁに?」

 無邪気な問いかけに湊は詩音の顔を見つめてからゆっくりと口を開いた。

「実はな、パパの仕事の都合で近いうちにこの家から別の家に引っ越すことになったんだ」
「またおひっこし?」

 思いがけない言葉に詩音はぱちぱちと目を瞬かせた。

 無理もない。

 湊と暮らし始める前は和葉と二人でアパートに住んでいて、三人で暮らし始めてようやく今の家での生活にも慣れてきたところだったのだから。

 そんな詩音の反応を見た湊はわずかに眉を下げる。

「……嫌か?」

 短い期間で何度も住まいが変わることは幼い詩音にとって負担になるかもしれない。

 そう考えると不安が胸を過ぎる。

 けれど詩音はすぐに首を横に振った。

「ううん、やじゃないよ? しおんはねぇ、パパとママがいっしょならいいんだ!」

 そう言って両隣に座る二人の手をぎゅっと握る詩音。

「……詩音」

 その言葉に和葉は胸がいっぱいになり詩音の小さな手を握り返し、湊もまた愛おしそうに詩音を見つめながら頭を優しく撫でた。

 そんな温かな空気の中、和葉は少しだけ言いづらそうに口を開いた。

「ねぇ、詩音。そのお引っ越しする場所なんだけどね……ここから少し遠いところになっちゃうの」
「とおいところ?」

 詩音がそうに聞き返すと和葉は頷いた。

「うん。だからね、卓也くんにも沢山は会えなくなっちゃうんだ」

 その言葉を聞いた途端、詩音の表情がほんの少し曇る。

 出逢ったのは最近だけど、詩音にとって卓也は大切な友達の一人。

 これまでのように気軽に会えなくなることは幼い詩音にも寂しいことなのだと二人にもすぐに伝わった。

「でもね、連絡は取れるんだよ? テレビ電話をすれば、お顔を見ながらお話だってできるし……」

 少しでも詩音の不安を和らげようと和葉は優しく語りかける。

「それに、沢山は無理だけど会いに来ることだってできるから……ね? それでも嫌かな?」

 いくつもの案を口にしながら詩音の顔色を窺う和葉。

 けれど詩音はすぐには答えず小さな手を握ったまま黙り込んでいた。

 幼いながらも何か思うところがあるのだろう。

 その様子を見ていた湊は申し訳なさそうに眉を下げると、そっと詩音の身体を抱き上げた。

「おいで」

 そう声を掛けて自分の膝の上に座らせると詩音の顔を覗き込むようにして改めて話しを始めた。
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