約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
詩音の理解も得られ、あとは渡米の日を待つばかりとなった和葉たち。
その前に思い出作りをと国内旅行の計画を立てている中、湊の元に一本の電話が入ったことで状況は一変する。
電話の相手は大我だった。
「もしもし」
電話に出た湊の耳に届いたのは、どこか思い詰めたような声だった。
『もしもし湊くん? その、落ち着いて聞いてほしいんだ』
「どうした?」
『…………伯父さんが倒れて、病院に運ばれたんだ』
「……親父が、倒れた?」
思いもよらない知らせに湊は思わず聞き返した。
『……湊くんにとっては憎い相手だろうし、もう赤の他人も同然かもしれないけど……一応、連絡しておいた方がいいと思って』
大我の声には湊の心情を気遣うような遠慮が滲んでいる。
「……容態は、どうなんだ?」
『脳出血らしい。突然倒れたみたいで……今も意識が戻っていないんだ。このまま意識が戻らなければ命に関わる危険な状態だって医者が言っているって父さんが……』
「…………そうか」
返事をしたものの、それ以上の言葉が出て来ない。
『……こんな連絡をしてごめん。父さんが湊くんにも知らせておけって言うから……』
「……分かった。連絡ありがとう」
それだけ告げると湊は静かに電話を切った。
手の中のスマートフォンを見つめたまま暫くその場から動かない。
父親が倒れ、命に関わるほど危険な状態だという。
それなのに湊の胸に湧き上がってきたのは悲しみでも動揺でもなく、倒れたと聞いても何とも思わない自分がいた。
父親が生死の境をさまよっているというのに心配する気持ちすら湧いてこない。
そんな自分を薄情な人間だと思わないわけではなかったけれど、これまで父親から受けてきた仕打ちを思えばそうなってしまうのも無理はないとさえ感じていた。
それでも危険な状態にあることは事実なので、一度くらい顔を出すべきなのかそれとも行かないべきか。
答えを出せずにいると、なかなか戻ってこない湊を心配した和葉がそっと顔を覗かせた。
「湊さん? 電話、終わったの?」
「あ……ああ」
「大丈夫? 何だか顔色が悪いみたいだけど……何かあったの?」
和葉のその問い掛けに湊はゆっくりと口を開いた。
「……実は大我から連絡があってな…………親父が倒れて、病院に運ばれたらしい」
「えっ……お義父様が!?」
思いがけない知らせに和葉は目を見開いた。
「それで、容態は……?」
「脳出血で意識が戻っていないらしい。このまま目を覚まさなければ命に関わる状態だって話だ」
「そんな……」
和葉からしても、あまり良い相手では無い湊の父親。
けれど、命に関わる事態だと聞けば心穏やかではいられない。
「湊さん……病院に行かなくて、いいの?」
「……いい」
「でも、意識が戻らないほど危険な状態なんでしょう? もしかしたら、これが最後になるかもしれないのよ?」
「……分かってる」
「だったら……」
「俺とあの人は、もう親子でも何でもない……それほどのことをあの人はしたんだ。今さら心配する気にもならねぇよ」
「……そう……よね……」
和葉はそれ以上何も言えなかった。
これまでのことを思えば湊がそう決断を下すのは十分納得が出来るけれど、湊の表情にはどこか迷いかあるように感じた和葉はもう一度だけ、確かめるように問いかけた。
「本当に、いいのね?」
「いいんだ……もう関係ない」
それだけ言い残すと湊は詩音の待つリビングへと戻っていき、残された和葉は何とも言えない気持ちを抱えながら、その背中を黙って見つめていた。
その前に思い出作りをと国内旅行の計画を立てている中、湊の元に一本の電話が入ったことで状況は一変する。
電話の相手は大我だった。
「もしもし」
電話に出た湊の耳に届いたのは、どこか思い詰めたような声だった。
『もしもし湊くん? その、落ち着いて聞いてほしいんだ』
「どうした?」
『…………伯父さんが倒れて、病院に運ばれたんだ』
「……親父が、倒れた?」
思いもよらない知らせに湊は思わず聞き返した。
『……湊くんにとっては憎い相手だろうし、もう赤の他人も同然かもしれないけど……一応、連絡しておいた方がいいと思って』
大我の声には湊の心情を気遣うような遠慮が滲んでいる。
「……容態は、どうなんだ?」
『脳出血らしい。突然倒れたみたいで……今も意識が戻っていないんだ。このまま意識が戻らなければ命に関わる危険な状態だって医者が言っているって父さんが……』
「…………そうか」
返事をしたものの、それ以上の言葉が出て来ない。
『……こんな連絡をしてごめん。父さんが湊くんにも知らせておけって言うから……』
「……分かった。連絡ありがとう」
それだけ告げると湊は静かに電話を切った。
手の中のスマートフォンを見つめたまま暫くその場から動かない。
父親が倒れ、命に関わるほど危険な状態だという。
それなのに湊の胸に湧き上がってきたのは悲しみでも動揺でもなく、倒れたと聞いても何とも思わない自分がいた。
父親が生死の境をさまよっているというのに心配する気持ちすら湧いてこない。
そんな自分を薄情な人間だと思わないわけではなかったけれど、これまで父親から受けてきた仕打ちを思えばそうなってしまうのも無理はないとさえ感じていた。
それでも危険な状態にあることは事実なので、一度くらい顔を出すべきなのかそれとも行かないべきか。
答えを出せずにいると、なかなか戻ってこない湊を心配した和葉がそっと顔を覗かせた。
「湊さん? 電話、終わったの?」
「あ……ああ」
「大丈夫? 何だか顔色が悪いみたいだけど……何かあったの?」
和葉のその問い掛けに湊はゆっくりと口を開いた。
「……実は大我から連絡があってな…………親父が倒れて、病院に運ばれたらしい」
「えっ……お義父様が!?」
思いがけない知らせに和葉は目を見開いた。
「それで、容態は……?」
「脳出血で意識が戻っていないらしい。このまま目を覚まさなければ命に関わる状態だって話だ」
「そんな……」
和葉からしても、あまり良い相手では無い湊の父親。
けれど、命に関わる事態だと聞けば心穏やかではいられない。
「湊さん……病院に行かなくて、いいの?」
「……いい」
「でも、意識が戻らないほど危険な状態なんでしょう? もしかしたら、これが最後になるかもしれないのよ?」
「……分かってる」
「だったら……」
「俺とあの人は、もう親子でも何でもない……それほどのことをあの人はしたんだ。今さら心配する気にもならねぇよ」
「……そう……よね……」
和葉はそれ以上何も言えなかった。
これまでのことを思えば湊がそう決断を下すのは十分納得が出来るけれど、湊の表情にはどこか迷いかあるように感じた和葉はもう一度だけ、確かめるように問いかけた。
「本当に、いいのね?」
「いいんだ……もう関係ない」
それだけ言い残すと湊は詩音の待つリビングへと戻っていき、残された和葉は何とも言えない気持ちを抱えながら、その背中を黙って見つめていた。