約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「……私が、……貰う資格など……ない……」

 父親は小刻みに身体を震わせながらか細い声で呟いた。

 その瞳には涙が滲んでいて今にも零れ落ちそうになっている。

「兄さん……」

 そんな兄の姿を目にした叔父もまた、目元を潤ませながら静かに語りかけた。

「兄さん……いい加減、素直になった方がいい」

 諭すような声に父親は俯いたまま耳を傾ける。

「湊はもう子供じゃない、立派な大人じゃないか。それに、こんなに素敵な見舞いの品を贈ってくれる孫までいる……幸せなことじゃないか。そうだろう? このまま素直になれなかったら兄さんはこの先ずっと独りだ。いい加減自分の非を認めて、湊にも奥さんである和葉さんにも謝って……孫に、会わせてもらいなよ……な?」

 その言葉を受けた父親がゆっくりと顔を上げると、潤んだ瞳が目の前に立つ湊を捉えた。

「……湊……」

 声を絞り出すように名前を呼ぶと父親の頬を一筋の涙が伝った。

「私が……間違っていた…………今更謝ったところで、お前は許してくれないだろう……。それでも……悪かった…………本当に……すまなかった……」

 後悔と自責の念を滲ませながら父親は湊に向かって心からの謝罪の言葉を口にしたのだ。

 これには予想もしていなかったのだろう。

 湊は戸惑いを隠せずに立ち尽くす。

 父親から謝罪の言葉を口にされたのはこれが初めてのことなのだから無理もない。

 しかし、謝罪されたからといってこれまで父親にされたことがなかったことになるわけではなく、長年積み重なってきた確執が簡単に消えるはずもないので湊の胸中は複雑だった。

 そんな湊を見つめながら叔父が静かに口を開く。

「……湊、突然のことで戸惑う気持ちは分かる。けどな、兄さんは兄さんなりにお前のことを心配していたんだ」

 そう前置きしてから叔父は言葉を続けた。

「義姉さん――お前の母さんが亡くなったとき、兄さんは義姉さんに誓ったんだ。お前を立派な人間にしてみせるって」

 父親がどのような思いを抱いていたのか、それを代弁するように叔父はゆっくりと語る。

「ただ、兄さんはその方向を間違えた。自分の思想を押し付けることがお前のためになると信じ込んでいたんだ。それに気づきながら誰も指摘できなかった俺たち周りの人間にも責任がある……」

 叔父は悔いるように表情を曇らせ湊へと視線を向けた。

「……ごめんな、湊」

 その言葉に湊は何も答えなかった。

「今の兄さんの謝罪は本心だ。すぐに受け入れろとは言わない。時間はかかってもいいから……いつか……許してやってほしい」

 叔父の言葉を聞いた湊は改めて父親へと目を向けると、父親は詩音が描いたイラストを手にしたまま静かに涙を流していて、初めて目にする父親の涙と先程告げられた謝罪の言葉が湊の心を揺さぶっていた。
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