約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 悩んだ末、湊はこう口にした。

「…………悪い、少し時間が欲しい……。今日のところは……」

 その言葉を受けて真宙が静かに口を開く。

「では、このお話はまた日を改めてということで、今日のところは失礼させていただきますね。湊様帰りましょう」
「ああ」

 真宙の助けもあり湊はひとまずその場を後にすることになった。

 行きはタクシーを利用していたため、帰りは真宙が湊を自宅まで送り届けることとなった。

 車内に沈黙が流れる中、ふと湊が問いかける。

「……真宙、お前はどうするのが一番だと思う?」

 問いかけられた真宙は迷うことなくこう答えた。

「私は、会長の謝罪にも流された涙にも嘘はないと感じました。ですから歩み寄るのが最善かと」
「…………」
「もちろん、これまで湊様や和葉様にしてきたことを考えれば、許せないというお気持ちも理解できます。ですが、あの絵を描かれた詩音様のことを思えば……関係を修復して祖父(会長)と孫(詩音様)を会わせてあげるのが一番よろしいのではないでしょうか」

 真宙の言葉に湊は黙り込んだ。

 詩音のことを一番に考えるのなら父親と関係を修復する方がいいことは湊自身も十分に理解していた。

 それでも、これまで自分たちにしてきたことを思えば簡単に許すことが出来なかった。

「…………そう、だな……」

 ようやく絞り出した返事にも迷いは色濃く滲んでいた。

 結局、答えを出せないまま湊は自宅へと戻り、玄関を開けると待ち構えていたかのように詩音が駆け寄ってくる。

「パパ! おじーちゃん、だいじょうぶ? まひろおにいちゃんが、しおんのえをパパからおじーちゃんにわたすってきいたよ! おじーちゃんにわたしてくれた? おじーちゃん、よろこんでくれた?」

 矢継ぎ早に問いかけてくる詩音の表情は期待に満ち溢れていた。

 自分の描いた絵が祖父に届いたのか、それを見て喜んでくれたのか。

 早く知りたくてたまらないのだろう。

「こら詩音、そんなに一度に聞いたらパパが困るでしょう?」

 隣にいた和葉がたしなめると詩音は少しだけ頬を膨らませた。

「だってぇ……」

 それでも気になって仕方がないのだろう、詩音はすぐに湊へと視線を戻すと答えを待つようにじっと見つめた。

 その無邪気な瞳を前に湊は言葉を詰まらせたけれど、目の前にいる詩音の期待を裏切りたくないという気持ちだけは胸の中にあり、

「ああ、喜んでいたよ。詩音はおじいちゃんに会いたい?」

 喜んでいたことを伝えた上で、会いたいかという質問を投げ掛けた。
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