約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 病院を後にし、迎えに来ていた真宙の車に乗り込んだ三人。

 後部座席では詩音が和葉の隣に座り、嬉しそうに話しかけていた。

「おじーちゃん、げんきになるかな?」
「うん。詩音の絵を見たからきっとすぐに良くなるよ」
「よかった!」

 安心したように笑う詩音の頭を和葉は優しく撫でた。

 一方、助手席に座る湊に真宙が声をかける。

「会長とは、お話し出来ましたか?」
「……まあ、な。全てを許したわけじゃないが……少しずつ関係を修復していければいいとは思えたよ」
「そうですか」

 どこか穏やかな声音に真宙は安堵したように微笑んだ。

 長年の確執が簡単に消えるわけではないだろうけれど、二人の関係が少しずつでも良い方向へ向かうのならそれが何よりだと思った真宙はそれ以上何も言わず車を空港へと走らせた。

「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ありがとう、行ってくるよ」

 空港へ着いて車を降りると、真宙に見送られた三人は空港内へ。

 朝早くからはしゃいでいた詩音は車の中ですっかり眠ってしまい、湊はそんな詩音を抱きかかえて起こさないよう気をつけながら、その隣を歩いていた和葉に湊が声をかけた。

「和葉」
「何?」
「……ありがとうな、親父のこと」

 思いがけない言葉に和葉は少し目を丸くしたあとで小さく微笑む。

「ううん。私の方こそ、ありがとう。湊さんの意見を聞かずにお義父様に思ったことを伝えたのに……私の言葉をそのまま受け入れてくれて」
「……あんな親父を見たら和葉の考えが正しいと思っただけだよ」

 そう言って湊は腕の中で眠る詩音に視線を落とし、その愛らしい寝顔を見つめながら口を開く。

「…………詩音のお陰だな」
「そうね」

 顔を見合わせた二人は、どちらからともなく微笑み合った。

 詩音の純粋な思いが頑なだった父親の心を動かすきっかけになり、親子の絆をも繋ぎ直してくれたのだ。

 もちろん、これで全てが解決したわけではないけれど、ほんの少しだけ前に進めたのは事実。

 そう思えることが、二人にとっては何よりも大きかった。

「まだ問題はあるが、今は旅行を楽しもう」
「そうね、初めての家族旅行だものね」
「ああ」

 こうして三人は旅行先の九州へ向かうのだった。
< 121 / 124 >

この作品をシェア

pagetop