約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「でも……こんな高価なもの……」

 和葉はネックレスを見つめたまま戸惑いを隠せずにいると湊は困ったように笑う。

「そんなに気にしないで」
「でも……」
「それじゃあ、再会出来た記念ってことで、受け取ってほしい」

 優しい声音に和葉は湊を見つめると、その表情に見返りを求めるような色は一切なく、ただ純粋に贈りたかったのだということが伝わってきた。

「……ありがとう。大切にするね」
「うん」

 その言葉に湊は嬉しそうに微笑み、ショッピングモールを後にする。

 変わらず詩音が眠り続ける中、穏やかな時間が流れていた。

 けれど、駅へ近づくにつれて湊の心は少しずつ落ち着かなくなっていく。

 駅へ送り届けてしまえば今日という日は終わる。

 未だ連絡先を聞けていない湊は焦りもあった。

(どうにかしないと……)

 悩みに悩んだ末、湊は決心したように口を開く。

「あのさ」
「うん?」
「迷惑じゃなければ……自宅まで送らせてもらえない?」

 湊の提案に和葉は小さく首を横に振った。

「ううん、駅まで送ってもらえるだけで十分だから」

 けれど湊は引き下がらない。

「夕方で電車も混んでるだろうし、詩音ちゃんも寝てるんだ、詩音ちゃん抱き上げて荷物を持って帰るのは大変だろ?」
「それは……そうだけど」
「その、自宅を知られたくないなら、自宅の最寄り駅でもいい。とにかく少しでも近くまで送らせてよ」
「でも、私たちの住んでるところ、ここから結構離れてるし……」
「構わない」

 間髪入れずに返ってきた答えに和葉は思わず苦笑する。

「その、気持ちは有り難いけど本当に気にしなくて――」
「気にするよ」
「……っ!」

 ちょうど信号待ちで停まったこともあり、真っ直ぐな視線が和葉へ向けられる。

「だから送らせて」
「……でも」

 お互いに譲らないまま小さな押し問答が続いた、その時だった。

「……うーん、」

 詩音が小さく身じろぎをし、ゆっくりと目を開ける。

「詩音、もうそろそろ起きて?」

 駅に着くまでに起こさないといけないと和葉が声を掛けると、詩音は眠たそうに目を擦りながら尋ねた。

「……もう、かえるの?」
「そうよ。もうお家に帰ろうね」

 その瞬間、詩音は首を横に振り、

「やだ! まだ、かえらない!」

 今にも泣きそうに顔を歪めた詩音。

「詩音、我が侭言わないの。もう帰る時間なの」
「やだ!」
「詩音、どうしてそう聞き分けないこと言うの?」
「だって…………おにーちゃんと、バイバイしたくない……!」

 和葉の言葉にぽろぽろと涙を零し始めた詩音。

「詩音……」
「詩音ちゃん……」

 詩音の思わぬ言葉に和葉は黙り、見兼ねた湊は、

「大丈夫。まだバイバイしないよ」

 そう詩音に言い聞かせるよう優しく言い、湊はミラー越しに和葉へ視線を向けた。

「和葉」
「…………」
「このまま駅で別れるのはちょっと難しそうじゃない?」
「……そう、だけど……」
「もう少しだけ、近くまで送らせて」

 詩音の様子を見れば湊の提案を断ることなど出来ない和葉は小さく息を吐き、観念したように頷く。

「……ごめんなさい、それじゃあ……自宅の最寄り駅まで、お願いします」

 その言葉に湊はようやく安堵したように笑みを浮かべていた。
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