約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
店員が料理を運んでくると、テーブルの上は色鮮やかな料理でいっぱいになった。

湊はパスタ、和葉はオムライス、そして詩音の前には湯気の立つハンバーグが置かれている。

「わあ、おいしそう!」

瞳を輝かせた詩音は子供用のナイフとフォークを器用に使いながら一口頬張った。

「おいしい!」

満面の笑みに湊は自然と口元を緩める。

「それは良かった」

その優しい眼差しを見て和葉も思わず微笑んだ。

休日のファミリーレストランは多くの家族連れで賑わっていて、楽しそうに食卓を囲む親子の笑い声があちこちから聞こえてくるその光景を眺めながら和葉はふと思った。

(私たちも……周りから見たら家族に見えているのかな)

そんなことを考えてしまう自分に小さく苦笑する。

食事を終えたところで詩音が期待に満ちた瞳でメニューを見上げた。

「ねえママ、しおん、ケーキたべたい!」
「デザートはまた今度ね」
「えぇ~」

唇を尖らせる詩音に湊がくすりと笑う。

「いいじゃないか、折角だし、好きなのを頼もう」
「ほんと!?」

湊の言葉にパッと瞳を輝かせた詩音は嬉しそうにデザートメニューを開いた。

「これとね……あ、こっちもたべたい!」

そう言って指差したのはチョコレートケーキとミニパフェ。

「そんなに食べられないでしょう? どっちか一つにしなさい」

欲張る詩音に和葉が苦笑しながら言うと、詩音は困ったように二つの写真を見比べる。

その様子を見た湊はタッチパネルで両方選ぶと注文ボタンを押した。

「えっ」

それに和葉が驚いて顔を向ける。

「湊さん……」
「食べきれなさそうなら俺が食べるから、詩音ちゃん、食べられる分だけ食べていいからね」

穏やかに笑う湊に詩音は「やったー!」と飛び跳ねそうな勢いで喜んだ。

暫くして運ばれてきたチョコレートケーキとミニパフェを詩音は幸せそうに頬張っていく。

「おいしい!」

夢中で食べ進めていたかと思うと、ケーキを一口フォークですくい和葉へ差し出した。

「ママ、あーん」
「え?」
「はい、あーん!」

断り切れず口を開くと詩音は満足そうに笑う。

「おいしい?」
「うん。ありがとう」

すると今度はフォークを湊へ向けた。

「おにーちゃんも!」
「ああ、ありがとう」

湊が素直に一口もらうと詩音は嬉しそうに笑みを浮かべた。

続いてミニパフェをスプーンですくい今度は湊へ。

「はい!」
「こっちもくれるの?」
「うん!」

湊が笑いながら口に運ぶと、もう一度すくって今度は和葉の前へ。

「ママも!」
「ふふ、ありがとう」

二人が交互に差し出されるデザートを受け取るたび、詩音は満足そうに笑っていた。

その様子を見ながら和葉は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

まるで本当の家族のように笑い合う穏やかな時間がとても心地良かったから。

食事を終えると湊が伝票を持って先に席を立ち、詩音を連れて和葉も慌てて後を追う。

会計を済ませてしまった湊へ店の出口で声を掛け、

「湊さん、これ、私と詩音の分……」

和葉が差し出したお金を前に湊は首を横に振る。

「気にしなくていい」
「でも……」
「食事だって、俺が提案したんだから」

それだけ言うと湊は詩音を軽々と抱き上げた。

「さあ、帰ろうか」
「はーい!」

嬉しそうに湊の首へ腕を回す詩音の姿を見つめつつ、急いで二人の後を追い車へ乗り込む。

走り出した車内で窓から流れていく景色を眺めながら、和葉は静かに考えていた。

(もう……関わらないって決めたはずなのに)

昨日も今日も、湊に何から何まで世話になり、その優しさに甘えてしまっている自分がいた。

しかも詩音はすっかり湊に懐いている。

そして何より――湊の想いは今も自分へ向けられていることも分かり、その事実が固く閉ざしていた和葉の心を少しずつ揺さぶり始めていた。
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