約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 夏希の話を聞いた湊は険しい表情を浮かべていた。

 避妊はしていたけれど、完全では無いから万が一にもその可能性はあるかもしれない。

「俺の……? そりゃ、俺だって初めはそんなことも頭を過ったさ。けど、もし詩音ちゃんが俺の子供だったとしたら、どうして和葉は俺の前から姿を消すんだよ? 俺たちは婚約してたんだぜ?」

 信じたい気持ちと信じられない気持ちが入り混じった声だった。

 そんな湊とは対照的に夏希は冷静に言葉を続けていく。

「それはそうだけど、その婚約だって、お前と彼女の間で交わした約束だろ? しかもお前の親父さんは二人の交際に反対していた。考えたくはないが、お前が海外研修に行っている間に彼女へ接触して別れるよう迫った可能性だって十分ある」
「…………っ」

 その一言に湊は言葉を失った。

 確かに、その可能性は否定出来ない。

 婚約の意思を父へ伝えたとき、父は最後まで首を縦には振らなかった。

 それでも、「海外研修で実績を残せば認めてやる」と言われた為、湊はその言葉を信じて研修へ向かったのだ。

 そして期待以上の成果を上げて周囲からも高い評価を受けた。

 それには父も認めざるを得ない状況になったはずだった。

 それなのに、帰国した時に和葉は何も告げず姿を消していた。

 点と点だった出来事が一本の線で繋がっていく気がした。

「……やっぱり、詩音ちゃんは俺の子供……なのか?」

 その呟きに夏希は静かに頷きながら口を開く。

「はっきりさせたいなら、俺のほうでDNA鑑定を手配してもいい。どうする?」

 一瞬だけ考え込んだ湊だったが、すぐに首を横へ振った。

「いや……裏でこそこそ調べるような真似はしたくない。それじゃ和葉に申し訳ないからな。何とかして和葉の口から真実を聞かせてもらうよ」
「そうか。分かった」

 夏希はそれ以上何も言わなかった。

 そのあと、短く言葉を交わした湊は覚悟を決めるように息を吐くと、和葉と詩音が待つ部屋へと静かに歩き出した。

「和葉、詩音ちゃんの様子はどうだ?」

 詩音の容体を気にかけながら湊は静かに病室へ足を踏み入れると、ベッドのすぐ側に座っていた和葉は眠る詩音へ視線を向けたまま小さく微笑んだ。

「……湊さん。呼吸も落ち着いて、ぐっすり眠ってるわ」
「そうか。それなら良かった」

 安堵したように息を吐くと、湊は近くの椅子を引き寄せて和葉の隣へ腰を下ろした。

「湊さん本当にありがとう」

 感謝を込めて頭を下げる和葉に湊は穏やかに首を横へ振る。

「礼なんていらない。当然のことをしただけだよ。俺にとって詩音ちゃんは和葉と同じくらい大切な存在だからな」
「湊さん……」

 二人の視線が静かに重なったその瞬間、湊の脳裏に夏希との会話が蘇った。
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