約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
不穏な気配
 車に乗り込んだ湊はシートに身を沈めると秘書へ折り返しの電話をかけた。

「悪かったな。それで、親父は何て?」

 電話の向こうから秘書――佐武(さたけ) 真宙(まひろ)の落ち着いた声が返ってくる。

『会長が、社長の行動を怪しんでいるようです』
「何か頼んできたのか?」
『はい。調査会社に社長の身辺調査を依頼するようにと……』

 その言葉で湊の表情が険しくなる。

「分かった。とにかく俺は今から実家へ向かう。悪いが和葉(彼女)のことが公にならないよう上手くやって欲しい」
『心得ておりますのでご安心ください。調査会社には上手く言っておきますから』
「ありがとう」

 それだけ告げると湊は通話を切り、スマートフォンを助手席へ置くと深いため息が漏らした。

 確かに、ここ最近和葉や詩音のことが気掛かりで優先していたという自覚が湊にもあり、定期的に見舞っていた父親の元へ行かなくなったことが影響しているのだろうと反省した。

「……真宙が上手くやってくれるだろうから和葉のことはバレないだろうが……親父のことだ、何か新たな手を打ってくるに決まってる……」

 そう考えるだけで湊の気は重く、実家へ向かいたいと思えない。

「……けど、行くしかねぇよな……」

 立場的に逆らうことが出来ない湊は渋々車を実家へ向かって走らせた。

 それから一時間後、実家に着いた湊が父の私室を訪ねた。

「何の用だよ、親父」
「……入って早々それか。今日はどこに行っておったんだ?」
「関係ないだろ?」
「最近、出掛けることが多いようだな?」
「だったら何だよ?」
「…………女か?」
「親父には関係無い」
「お前は立場を分かっておるのか? いい加減嫁を貰ったらどうだ?」
「親父の決めた相手と一緒になるつもりは無い。俺が決めた相手で構わないならそうするさ」
「お前が決めた相手などろくな女じゃない。私が選んだ相手なら間違い無いんだ。いい加減我が侭を言うな」

 売り言葉に買い言葉、顔を合わせればいつもこのような会話に発展してしまう二人。

「話はそれだけか? それなら帰るよ」

 こうなることは予想出来ていた湊が呆れ顔でそう言い放つと父親は、

「待て、まだ話は終わっておらぬ」

 大声で呼び止めた。

「……何だよ、用があるならさっさと言ってくれ」

 仕方なく父親の方へ向き直った湊がそう問いかけると、

「今月末の日曜日、君嶋グループの娘と見合いをしろ」

 とんでもないことを言い出した。

「はあ? ふざけるな。俺は見合いはしない」
「社長なら立場を弁えろ。君嶋グループは我が社にとって無くてはならない取り引き相手だ。そこの会長直々に話を持ってきたんだ。何でも娘さんの一人がお前に気があるらしくてな、どうしても仲を取り持って欲しいと言っているらしい」
「勝手に決めるな。俺は行かない」
「湊! 鳴海家の跡取りとしての自覚が足りん! とにかくこれは決定事項だ。何があっても行け。いいな」
「…………っ」

 湊は父親に背を向けるとドアを強引に開けて部屋を出た。
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