約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
父親が何も言ってこないことに多少の引っかかりはあるものの、もしかすると父親としてもそこまで強く勧めたい縁談ではなかったのかもしれない。
相手が取引先の企業だったから話を持ち込まれ、断る理由もなかったから受けただけ。
湊はそんなふうに都合よく考えていた。
それよりも今の湊にとって耐え難いのは和葉と連絡も取れていないし会えもしないこと。
それというのも父親が自分の行動を怪しんでいることを受けて真宙から、『彼女に余計な迷惑をかけないためにも、しばらく距離を置いたほうがいいのでは無いか』と助言されたからだ。
湊自身もその判断が正しいことは分かっている。
けれど、連絡を取りたいし少しでもいいから顔を見たい。
何度もそう思いながら耐えていた。
「社長」
仕事を終えようとしていたところで真宙が声をかける。
「どうした?」
「先日、会長から頼まれた社長の身辺調査の件ですが、調査会社に依頼しまして社長が女性と会っていたという事実はないという報告書を作成していただきました」
「そうか。ありがとう」
「いえ」
真宙は手にしていた書類へ視線を落とす。
「ただ、会長がこれで納得されるかは少々微妙なところですね」
「そうだな」
湊は苦笑する。
「まあ、今回の調査会社は会長から依頼されているところですからその報告書であれば会長にも信用していただけるかと思います」
「そうだな。とりあえず、それを親父に渡しておいてくれ」
「かしこまりました」
真宙が書類をしまおうとしたところで湊の顔を見る。
「……社長」
「ん?」
「このところ、ご自宅に帰られていませんよね?」
「ああ。帰ったところですることもないしな。会社にはシャワー室もあるし、ここなら仮眠も取れる。別に帰らなくても困らないだろ?」
「ですが、それでは身体が休まりませんよ」
「……家に帰っても休まらねぇんだよ」
思わず漏れた言葉に真宙は言葉を噤む。
湊は椅子の背もたれに身体を預けると深く息を吐いた。
「外に出ると、アイツに会いに行きたくなっちまうんだ」
「社長……」
和葉と距離を置くよう勧めたのは他でもない真宙自身だが、その助言によって湊の精神的な疲れが溜まっていくことに責任を感じていた。
「社長。明日は仕事も休みですし……少しでも彼女に会いに行かれてはどうでしょうか。会長が何か言ってきたら上手く言っておきますから」
「いや、いい」
湊は首を横に振る。
「来週は彼女の子供のお遊戯会だからな。そこで会える」
「ですが……」
「お前が心配してくれてるのは分かってる。正直俺だって会いたいよ。でも今は余計なことをしないほうがいいんだ」
それを聞いた真宙はそれ以上何も言えなかった。
「……分かりました」
「今日はちゃんと家に帰る。明日はゆっくり休むから心配するな」
「はい」
真宙は一礼すると手にした報告書を確認した。
「それでは、こちらは会長にお渡ししておきます」
「ああ。頼んだよ」
「失礼いたします」
真宙が部屋を出て行き静かになった社長室で湊は溜め息を吐いた。
「……会いてぇな」
そして、ぽつりと呟いた言葉は誰に届くこともなく消えていくのだった。
相手が取引先の企業だったから話を持ち込まれ、断る理由もなかったから受けただけ。
湊はそんなふうに都合よく考えていた。
それよりも今の湊にとって耐え難いのは和葉と連絡も取れていないし会えもしないこと。
それというのも父親が自分の行動を怪しんでいることを受けて真宙から、『彼女に余計な迷惑をかけないためにも、しばらく距離を置いたほうがいいのでは無いか』と助言されたからだ。
湊自身もその判断が正しいことは分かっている。
けれど、連絡を取りたいし少しでもいいから顔を見たい。
何度もそう思いながら耐えていた。
「社長」
仕事を終えようとしていたところで真宙が声をかける。
「どうした?」
「先日、会長から頼まれた社長の身辺調査の件ですが、調査会社に依頼しまして社長が女性と会っていたという事実はないという報告書を作成していただきました」
「そうか。ありがとう」
「いえ」
真宙は手にしていた書類へ視線を落とす。
「ただ、会長がこれで納得されるかは少々微妙なところですね」
「そうだな」
湊は苦笑する。
「まあ、今回の調査会社は会長から依頼されているところですからその報告書であれば会長にも信用していただけるかと思います」
「そうだな。とりあえず、それを親父に渡しておいてくれ」
「かしこまりました」
真宙が書類をしまおうとしたところで湊の顔を見る。
「……社長」
「ん?」
「このところ、ご自宅に帰られていませんよね?」
「ああ。帰ったところですることもないしな。会社にはシャワー室もあるし、ここなら仮眠も取れる。別に帰らなくても困らないだろ?」
「ですが、それでは身体が休まりませんよ」
「……家に帰っても休まらねぇんだよ」
思わず漏れた言葉に真宙は言葉を噤む。
湊は椅子の背もたれに身体を預けると深く息を吐いた。
「外に出ると、アイツに会いに行きたくなっちまうんだ」
「社長……」
和葉と距離を置くよう勧めたのは他でもない真宙自身だが、その助言によって湊の精神的な疲れが溜まっていくことに責任を感じていた。
「社長。明日は仕事も休みですし……少しでも彼女に会いに行かれてはどうでしょうか。会長が何か言ってきたら上手く言っておきますから」
「いや、いい」
湊は首を横に振る。
「来週は彼女の子供のお遊戯会だからな。そこで会える」
「ですが……」
「お前が心配してくれてるのは分かってる。正直俺だって会いたいよ。でも今は余計なことをしないほうがいいんだ」
それを聞いた真宙はそれ以上何も言えなかった。
「……分かりました」
「今日はちゃんと家に帰る。明日はゆっくり休むから心配するな」
「はい」
真宙は一礼すると手にした報告書を確認した。
「それでは、こちらは会長にお渡ししておきます」
「ああ。頼んだよ」
「失礼いたします」
真宙が部屋を出て行き静かになった社長室で湊は溜め息を吐いた。
「……会いてぇな」
そして、ぽつりと呟いた言葉は誰に届くこともなく消えていくのだった。