約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 現場検証や事情聴取を終えて警察が引き上げて行き、玄関先で警察官を見送った湊は深く息を吐く。

 幸い、何かを盗まれてはいなかったものの安心出来る状況でもない。

 誰かが鍵を壊して侵入したことは間違いないわけで、それが嫌がらせの類なのか、それとも本当に空き巣だったのかは分かっていない。

 侵入した直後に和葉たちが帰宅したために何も盗らずに逃げた可能性もある。

 警察も断定はできないようだった。

 そして、アパートの管理会社の担当者も来ていて鍵の修理などの対応してくれるとのことなのだが、

「壊された鍵の修理ですが、業者の手配が明日以降になってしまいまして……この部屋にいるのが不安でしたら別の場所へ移られたほうがよろしいかと思います」

 時刻は午後八時過ぎ、これから修理の業者が来ることは出来ないようで別の場所で過ごすことを勧められた和葉は困り顔で呟いた。

「別の場所……」

 ホテルを探すにしても金銭的な面もあって選択肢も限られるし、詩音を連れて移動するのも簡単ではない。

 どうすればいいのか分からず立ち尽くしていると隣にいた湊が静かに口を開いた。

「俺の部屋に来ればいい」
「え……?」
「詩音ちゃんも眠たそうだし、急いで準備しよう」
「でも……」
「いいから」

 有無を言わせない口調ではあるが、心配してくれていることが和葉に伝わってくる。

「……ごめんなさい。ありがとう……」

 その後、湊に付き添ってもらいながら最低限必要な荷物だけを纏めた和葉は詩音と共にの湊の車へ乗り込んだ。

 そして、湊の住むマンションへやって来た和葉は呆気に取られた。

「……ここ?」

 一人暮らしとは思えないほど立派で広いマンションだったからだ。

 室内は落ち着いた雰囲気で統一されて余計な物はほとんどない。

 詩音はそんな部屋を見渡すとぱっと顔を輝かせた。

「おにーちゃんのおうち、おしろみたいだね!」
「そうかな?」

 思わず湊が笑う。

「うん! だってひろいもん!」

 詩音は嬉しそうに部屋の中を見回している。

 車の中で少し眠ったことと湊が傍に居てくれることですっかり元気になり、そんな詩音の姿を見た和葉もようやく肩の力を抜いた。

「こっちの部屋は使ってないから、好きに使ってくれ」
「え……? ここを使っていいの?」
「ああ。ここは来客用の部屋で滅多に使わないからな。今ベッドを整えるよ」
「ありがとう……あの、シーツとか、私がやるよ」
「気にするな。それより、先に風呂入って来い。詩音ちゃんを寝かせないとだろ?」
「それはそうだけど……」
「お湯張った方がいいか?」
「ううん、今日はもうシャワーで済ませちゃうから大丈夫」
「そうか」
「それじゃあ、お言葉に甘えてお風呂借りるね」
「ああ」

 和葉は詩音と共にお風呂へ入ることになり、その間に湊は二人が使う部屋のベッドメイキングをすることにした。
< 58 / 71 >

この作品をシェア

pagetop