約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 互いに挨拶を済ませると程なくして料理が運ばれてきたので、四人は食事をしながら会話を交わしていく。

 話題を振るのは主に梓沙だった。

 仕事のことや普段の生活、趣味など当たり障りのない質問を次々と投げかけられた湊はその一つ一つ簡潔に答えていく。

 そんな中、梓沙は終始楽しそうに笑っていた。

 やがて料理をすべて食べ終え、お茶を飲みながら一息ついていると梓沙が湊へ視線を向けた。

「鳴海さん、少しだけ二人でお話ししたいです」

 その言葉に湊はわずかに眉を動かした。

 出来ることなら二人きりにはなりたくない。

 だが最初からこの話を断るつもりでいた湊は申し訳なさから少しくらいならいいかと了承する。

「……わかりました。少しだけなら」
「ありがとうございます」

 二人は料亭の中庭へと移動し、梓沙は庭を眺めながら申し訳なさそうに口を開いた。

「すみません。わがままを言ってしまって」
「いえ……」
「今日はお話を受けてくださって本当にありがとうございました。驚かれましたよね?」
「ええ、まあ……」

 湊が曖昧に答えると梓沙は小さく笑い、少しだけ躊躇うように視線を伏せてから再び彼を見つめる。

「……鳴海さんのことは以前開かれたパーティー会場でお見かけしたんです」
「……」
「とても格好良くて……一目で恋に落ちました」

 真っ直ぐに告げられた湊は何も答えなかった。

「こんな一方的な好意を向けられても戸惑われるのは承知しています。ですが、君嶋家と鳴海家がより深い関係になれば互いの会社にとっても大きな利益になると思うんです…………ですから……前向きに考えてもらえませんか?」

 その言葉を聞き終えると湊は静かに息を吐いて口を開いた。

「申し訳ありませんが、俺には心に決めた人がいるので貴方と一緒になることはできません」

 きっぱりと告げる梓沙の表情がわずかに強張った。

 けれど湊は構わず言葉を続けた。

「今回のことも父が一方的に決めてきたことです。君嶋さんとは鳴海家としても大切な取引相手ですが…………それと今回の件は別の問題だと思っています。この話を断ったことで今後の付き合いを考えるということであれば、それも仕方のないことだと思っています。ですから……遠慮なく仰ってくださいとお父様にお伝えください」

 それ以上の余地を残さないはっきりとした拒絶に梓沙は黙ってしまう。

 流石に言いすぎたかと湊は申し訳なさを浮かべていると、俯いていた梓沙の口元に薄い笑みが浮かぶ。

「湊さんって、本当に頑固な方なんですね」

 そして顔を上げると梓沙は、

「私、諦めませんよ? 想い人がいらっしゃることも分かっています。その上で今回の話を持ちかけさせていただきました」

 急に態度を変えた梓沙を前に湊は驚きのあまり言葉を失った。
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