約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
 車へ戻ってきた湊はシートに身体を沈めるなり忌々しげに吐き捨てた。

「話にならねぇな。真宙、悪いが今後親父との話には全部間に入ってくれ。二人きりで話してると手が出ちまいそうになる……」

 運転席に座る真宙はバックミラー越しに湊の様子を窺う。

「……お話のほうは上手くいかなかったのですね」
「ああ。そもそも聞く耳を持ってねぇ。あれじゃあ何を話したって無駄だ」
「そうですか……。それでは、今日はもうご自宅へ戻られますか?」
「ああ。早く和葉と詩音ちゃんに会いたいからな。頼む」
「畏まりました」

 真宙は頷くと車を発進させる。

 本来なら今日、父親に和葉との関係を正式に話すつもりだった。

 だが、そんな湊の考えを見透かすかのように父親は既に和葉の存在を掴んでいた。

 それどころか今回の見合いすら父親が仕組んだものだったのだと思うと、湊の中には再び激しい怒りが込み上げる。

 権力をふりかざして自分の思い通りにさせようとする父親のやり方だけはどうしても許せなかった。

「……ったく」

 窓の外へ視線を向けながら湊は小さく息を吐く。

 父親に啖呵を切ったけれど、縁を切ることもすぐ社長の座を退くことも決して簡単なことではない。

 それは自分だけの問題ではないからだ。

 会社には多くの社員がいるし、取引先もいる。

 そして、自分を支えてくれている人間もいる。

 ただ、これから先父親がどんな手を使ってくるのかも分からない。

 そう考えると、自然とため息が漏れた。

(それでも、やるしかねぇよな……親父が和葉とのことを認めるなんて……何があってもするわけねぇんだから)

 だからこそ、これから先のことを一から考えていく必要がある。

 そんな湊の姿を真宙はバックミラー越しに心配そうに見つめていた。

 やがて車は湊の住むマンションへと到着し、車を停めると真宙は湊へ声をかけた。

「社長」
「ん? 何だ?」
「……社長がどんな決断をされても、私も千宙も社長について行きますから」

 その言葉に湊は一瞬目を見開いた。

「協力出来ることがあれば何でも仰ってください。私たちに出来ることは全力でお力になります」

 思いがけない言葉に湊の表情がわずかに和らぎ、ふっと笑った。

「ありがとう」

 短い言葉だったがそこには心からの感謝が込められていた。

「真宙と千宙がいてくれれば百人力だな。頼りにしてる」
「はい。お任せください」

 真宙の返事を聞くと湊は車を降りていった。
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