約束の続きをもう一度~再会した御曹司の彼は、娘ごと私を甘やかして離しません~
「子供なら親の言うことを聞くのが当然だろう! それを……恩を仇で返すような真似をしおって!」
「俺はアンタに育てられた覚えはない。お袋が早くに死んでから俺を育ててくれたのはじいちゃんとばあちゃんだ」
「…………っ!」
「アンタは顔を合わせれば成績がどうだ、きちんとやっているか、そんなことを聞いていただけだろう? それだけで父親面するなよ」
「何だと!? 私が働いたお陰でお前は何不自由なく暮らせただろうが!」
「…………」
「食うものにも住む場所にも困らなかった! 欲しいものだって与えてやった! それなのにお前は……! 恩を仇で返すのか!」
「恩、か……金を与えれば親になれると思っているのか?」
「貴様!」

 売り言葉に買い言葉、積み重なった年月の分だけ二人の間に溝は深く刻まれていて、どちらも一歩も引かない状態が続く。

「何だ? まだ何か言い足りないのか? 俺はアンタを許さない。俺にとやかく言うのは別に構わない。だがな――」

 そこで一度言葉を切ると湊は拳を強く握り締めた。

「和葉にしたことは、許せるわけがねぇんだよ」
「……何のことだ?」

 父親が白々しくに眉を寄せると、その反応を見た瞬間湊の怒りが更に募り、

「とぼけるな! 俺が海外研修に行っている間和葉に別れを迫ったじゃねぇか! 俺の子供がいると知って……アンタは和葉に何て言った!?」

 抑えきれない感情が次々と口から溢れ出す。

「俺と和葉と詩音――三人で過ごすはずだった時間をアンタは奪ったんだぞ!? それを許せるわけがねぇだろうが!!」
「…………」

 あまりの剣幕に父親は言葉を失った。

 これまで何を言われても反論してきた父親だったが、今度ばかりは何も言い返すことが出来ないのか、ただ黙り込み目の前に立つ湊を見つめていた。

 そんな父親を見ながら湊は冷たい声で続けていく。

「無茶苦茶な人間だとは思っていたが……まさかここまでとは思わなかったよ……和葉を傷つけたことも俺たち二人の……いや、詩音を含めた三人の時間を奪ったことも俺は絶対に許すつもりはない。これ以上アンタが何を言おうが無駄だ。俺はもうアンタの言うことなんて聞かない」

 そして最後に鋭い視線を向けた。

「君嶋の令嬢にも、きちんと話しておけ。これ以上俺や和葉に何かしてくるようなら……法的措置も検討するからな」

 それだけ言い残すと湊は父親の返事を待つことなく踵を返してそのまま部屋の扉へ向かい静かに扉を開ける。

「待て――」

 父親がようやく声を上げたが湊は振り返らずにそのまま部屋を後にしていく。

「……会長」

 そして、これまで黙って二人のやり取りを見守っていた真宙が口を開き、一度深く息を吐くと静かに頭を下げた。

「これまでお世話になりました。私はこれからも社長について行きます。ですので……私は本日をもって会社を辞めさせていただきます」
「な……」

 思いもよらない言葉に父親が絶句するも真宙は構わず言葉を続けた。

「少しでもいいので社長のお気持ちを考えてください。子は……親の道具ではありません。それぞれに意思があります。それぞれの人生があります。これ以上社長や和葉さんを苦しめないでください……失礼します」

 それだけ伝えた真宙もまた部屋を出て行き、部屋には父親だけが残され、何も言えずただ項垂れていた。
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