よあけ色のカフェオレ
終章 星みっつの、朝
一月の、いちばん寒い夜だった。
その日、すばる荘は珍しく、宿泊客がゼロだった。
妙なのだ、と陽菜多は、夕方から思っていた。
まず、佳澄さんが来ていた。谷を二つ越えて、宮下先生と一緒に。「たまたま近くまで来たから」と言っていたが、この谷に「たまたま近く」は存在しない。
源一郎さんは、なぜか一張羅のセーターを着ていた。
そして小暮さんが、朝から三回も、シャツにアイロンをかけ直していた。
「……何かあるんですか?」
「別に」
「絶対ありますよね」
「ないよ」
「佳澄さん、何かありますよね」
「さあ」
佳澄さんは、たいへん下手な棒読みで言い、宮下先生は聞こえない振りをして、犬の話を始めた。
夕食のあと、小暮さんが言った。
「陽菜多ちゃん。外、出てみない?」
零下十度の高原に、陽菜多は厚手のコートと、マフラーと、借り物の長靴で出た。
空を見上げて、息が止まった。
冗談みたいな数の星が、頭の上にあった。都会で育った人間の語彙では、まったく足りない量だった。
「南東のほう。あそこ」
小暮さんが、白い息と一緒に、指をさした。
「いちばん明るいのが、シリウス。左上の、赤っぽいのが、ベテルギウス。左のほうの、白いのがプロキオン」
三つの星を、目でつないだ。
大きな、きれいな三角形が、冬の空にかかっていた。
「……ほんとに、三角形」
「三角形は、強いんだよ」
「知ってます。二回目です、その話」
「そうだっけ」
「そうです」
小暮さんが、笑った。白い息が、笑った形に散った。
二人は、しばらく黙って、空を見ていた。
寒くて、指の先の感覚がなくなってきたころ、小暮さんが言った。
「陽菜多ちゃん。中、入ろうか。……カフェオレ、淹れるよ」
「はい」
「うちのカフェオレはね、時間がかかるよ」
「知ってます」
食堂に戻ると、誰もいなかった。
佳澄さんも、宮下先生も、源一郎さんも、きれいさっぱり消えていた。「参謀は戦場には立たない」というやつだろうか。あの人たちにも、それぞれの流儀があるらしい。
残っていたのは、猫が三匹だけだった。
カウンターの端の席で、シリウスが丸くなっていた。その前足のところに、プロとベテが団子になっていた。二匹はもう、団子になるには少し大きくなりすぎていて、ときどき、押し出されては戻っていた。
小暮さんが、鍋に牛乳を注いだ。弱火にかけて、木べらで、ゆっくりかき回す。焦がさないように。
陽菜多は、指定席に座った。座るとき、猫たちが、ちょっとだけ場所を空けてくれた。
「陽菜多ちゃん」
背中のまま、小暮さんが言った。
「はい」
「先月、お父さんに、言いました」
「……知ってます」
「え」
「お母さんが、その日のうちにメッセージくれました。『お父さんがお肉焼いてる』って」
「……あの家、情報が早いね」
「早いです」
牛乳が、鍋の縁で、小さく泡立ち始めた。
「順番が、逆になっちゃったんだ」
小暮さんは、火を弱めた。
「本当は、君に先に言うべきだった。でも、お父さんの前で言えないことを、君に言うのは違うと思って。……いや、これも言い訳だな。ごめん。俺、いつまでたっても、言い訳の名人なんだ」
カップに、コーヒーと牛乳が注がれる。いつもより、ずっと時間をかけて。
それから小暮さんは、シナモンの小瓶を手に取った。
泡の上に、何かを描いた。
カウンターに置かれたカップを見て、陽菜多は、息をのんだ。
星が、みっつ、あった。
大きいのと、小さいのと、もうひとつ小さいのが、三角に並んでいた。
「四年前に、ふたつ描いたときはさ」
小暮さんは、カウンター越しに、まっすぐ陽菜多を見た。
「あれは、俺と君のつもりだった。連星の話をして、格好つけてね。……でも、あれ、間違ってたんだ」
「間違い?」
「ふたつだと、線にしかならない。線は、片方が折れたら、それで終わりだ。ー俺はさ、ずっと、そのこわさを抱えてたんだと思う。女房と二人だった線が、ぷつんと切れたときのことを」
小暮さんは、カウンターの上で、手を組んだ。
「でも、この一年で、点が増えた。義父さんがいて、佳澄ちゃんがいて、宮下先生がいて、真弓ちゃんがいて、田口さんがいて、君のお父さんとお母さんがいて、猫が三匹いて。……気がついたら、面になってた。俺ひとりが折れても、もう、簡単には潰れない」
湯気が、二人のあいだで、ゆっくり揺れていた。
「陽菜多ちゃん。ーみっつめの話を、していいですか」
陽菜多の心臓が、大きな音を立てた。
小暮さんは、カウンターの下から、一冊のノートを取り出した。
古い大学ノート。表紙に、丸くて、少し右上がりの字。
〈お店ノート 中原佳子〉
小暮さんは、それを開いて、最後のページの、次のページを見せた。
白紙だったはずのページに、字が書いてあった。下手な、角ばった字だった。
〈すばる荘 二代目のノート
一、朝のコーヒーは、週末だけ。無理をしない。
二、部屋は四つ。三角形の面積を、増やしすぎない。
三、この家の人は、それぞれ自分の名前の仕事を持つこと。
四、カフェオレは、砂糖を入れなくても甘いのが理想(佳子案)。
五、ー〉
五番目は、空白だった。
「五番目は、俺には書けないんだ」
小暮さんは、言った。
「そこはね、この家に来る人が、自分で書くところなんだと思う」
陽菜多の目から、涙がこぼれて、ノートに落ちそうになった。あわてて顔を上げた。
小暮さんが、ノートの間から、小さな箱を取り出した。
あの、不器用な手つきで。
「五十歳が、二十四歳に言うことじゃないって、まだ思ってる。世間は何か言うと思う。君のお父さんに、俺は何ひとつ反論できなかった。……それでも、言います」
小暮さんは、深く息を吸った。
「結婚してください」
そして、四年のあいだ一度も呼ばなかった呼び方で、こう言った。
「ーひなた」
陽菜多は、両手で口を押さえた。
押さえないと、声が出てしまいそうだった。
父が二十四年間、心の中だけで呼んでいた名前。照れくさくて一度も口に出さなかった名前。それを、この人は、どこからか受け取って、いま、目の前で使った。
言葉というのは、人から人へ、二十年も三十年も、旅をする。
そして、旅の終わりに、こういうことをする。
「……はい」
やっと出た声は、みっともなくかすれていた。
「はい。……します。結婚、します」
小暮さんが、笑った。
目尻の皺の、いちばん奥まで届く笑い方だった。それから、その皺のところに、指を当てて、下を向いた。
柱時計が、九時を打った。
あの店から運んできた、十年ぶん、いや、もっとたくさんの時間を刻んできた古い時計の音が、高原の夜に響いた。
陽菜多は、カップを持ち上げて、ひとくち飲んだ。
世界でいちばん、おいしそうに。
カウンターの上で、シリウスが、ゆっくり片目を開けた。
そして、たいへん迷惑そうな顔で、こちらを見た。
四年前、雨宿りで飛び込んだ店で、初めてこの猫に見られたときと、まったく同じ目つきだった。
「……なによ、シリウス。文句あるの」
猫は、答えなかった。かわりに、のそりと立ち上がって、陽菜多の膝に乗った。
重かった。
十六歳の猫は、驚くほど重くて、あたたかかった。
翌朝、陽菜多は、五時に目が覚めた。
窓の外が、少しずつ、よあけ色になっていく。
厨房から、もう、コーヒーの匂いがしていた。あの人は、たぶん一睡もしていない。五十歳が、緊張で眠れなかったのだと思うと、可笑しくて、切なくて、可愛かった。
陽菜多は、そっと食堂に降りていった。
カウンターの端の、指定席。
そこに座って、いつものように言った。
「カフェオレ、ください」
「はい。ーうちのカフェオレはね、時間がかかるよ」
「知ってます」
窓の向こうで、山の稜線が、金色に光り始めた。
たそがれ色と、よあけ色は、絵の具にすればきっと同じ色だ。同じ橙で、同じ薄紫で、同じ金色。
でも、まるで違う。
たそがれ色は、これから暗くなる色。よあけ色は、これから明るくなる色。
ー同じ色なのに、なんて不公平なんだろう、と、二十四歳の陽菜多は、去年の春に思った。
いまは、少し違うことを思う。
あれは、どちらが良いという話ではなかったのだ。
人はたぶん、たそがれ色を何度もくぐって、そのたびに、よあけ色を見つけ直すだけなのだ。あの店を失った日も、救急車を待った二十二分も、廊下で「違います」と答えた日も、全部たそがれ色だった。そして、そのどれもが、朝につながっていた。
恋は、たいてい傘を忘れた日にやって来る。
そして、ほんものの恋はーゆっくり温めた牛乳と同じで、時間をかけた分だけ、甘くなる。
足元で、みゃあ、と声がした。
プロとベテが、順番に、陽菜多の足に体当たりしてきた。しつけの悪さは、完全に親ゆずりである。そのうしろから、灰色の大きな猫が、のそのそとやって来て、当然のような顔で、陽菜多の隣の椅子に飛び乗った。
「はい、お待たせ」
カウンターに、大ぶりの白いカップが置かれた。
湯気の中で、シナモンの星がみっつ、寄り添って光っていた。
窓の外の空は、もう、よあけ色ではなくなっていた。
朝だった。
その日、すばる荘は珍しく、宿泊客がゼロだった。
妙なのだ、と陽菜多は、夕方から思っていた。
まず、佳澄さんが来ていた。谷を二つ越えて、宮下先生と一緒に。「たまたま近くまで来たから」と言っていたが、この谷に「たまたま近く」は存在しない。
源一郎さんは、なぜか一張羅のセーターを着ていた。
そして小暮さんが、朝から三回も、シャツにアイロンをかけ直していた。
「……何かあるんですか?」
「別に」
「絶対ありますよね」
「ないよ」
「佳澄さん、何かありますよね」
「さあ」
佳澄さんは、たいへん下手な棒読みで言い、宮下先生は聞こえない振りをして、犬の話を始めた。
夕食のあと、小暮さんが言った。
「陽菜多ちゃん。外、出てみない?」
零下十度の高原に、陽菜多は厚手のコートと、マフラーと、借り物の長靴で出た。
空を見上げて、息が止まった。
冗談みたいな数の星が、頭の上にあった。都会で育った人間の語彙では、まったく足りない量だった。
「南東のほう。あそこ」
小暮さんが、白い息と一緒に、指をさした。
「いちばん明るいのが、シリウス。左上の、赤っぽいのが、ベテルギウス。左のほうの、白いのがプロキオン」
三つの星を、目でつないだ。
大きな、きれいな三角形が、冬の空にかかっていた。
「……ほんとに、三角形」
「三角形は、強いんだよ」
「知ってます。二回目です、その話」
「そうだっけ」
「そうです」
小暮さんが、笑った。白い息が、笑った形に散った。
二人は、しばらく黙って、空を見ていた。
寒くて、指の先の感覚がなくなってきたころ、小暮さんが言った。
「陽菜多ちゃん。中、入ろうか。……カフェオレ、淹れるよ」
「はい」
「うちのカフェオレはね、時間がかかるよ」
「知ってます」
食堂に戻ると、誰もいなかった。
佳澄さんも、宮下先生も、源一郎さんも、きれいさっぱり消えていた。「参謀は戦場には立たない」というやつだろうか。あの人たちにも、それぞれの流儀があるらしい。
残っていたのは、猫が三匹だけだった。
カウンターの端の席で、シリウスが丸くなっていた。その前足のところに、プロとベテが団子になっていた。二匹はもう、団子になるには少し大きくなりすぎていて、ときどき、押し出されては戻っていた。
小暮さんが、鍋に牛乳を注いだ。弱火にかけて、木べらで、ゆっくりかき回す。焦がさないように。
陽菜多は、指定席に座った。座るとき、猫たちが、ちょっとだけ場所を空けてくれた。
「陽菜多ちゃん」
背中のまま、小暮さんが言った。
「はい」
「先月、お父さんに、言いました」
「……知ってます」
「え」
「お母さんが、その日のうちにメッセージくれました。『お父さんがお肉焼いてる』って」
「……あの家、情報が早いね」
「早いです」
牛乳が、鍋の縁で、小さく泡立ち始めた。
「順番が、逆になっちゃったんだ」
小暮さんは、火を弱めた。
「本当は、君に先に言うべきだった。でも、お父さんの前で言えないことを、君に言うのは違うと思って。……いや、これも言い訳だな。ごめん。俺、いつまでたっても、言い訳の名人なんだ」
カップに、コーヒーと牛乳が注がれる。いつもより、ずっと時間をかけて。
それから小暮さんは、シナモンの小瓶を手に取った。
泡の上に、何かを描いた。
カウンターに置かれたカップを見て、陽菜多は、息をのんだ。
星が、みっつ、あった。
大きいのと、小さいのと、もうひとつ小さいのが、三角に並んでいた。
「四年前に、ふたつ描いたときはさ」
小暮さんは、カウンター越しに、まっすぐ陽菜多を見た。
「あれは、俺と君のつもりだった。連星の話をして、格好つけてね。……でも、あれ、間違ってたんだ」
「間違い?」
「ふたつだと、線にしかならない。線は、片方が折れたら、それで終わりだ。ー俺はさ、ずっと、そのこわさを抱えてたんだと思う。女房と二人だった線が、ぷつんと切れたときのことを」
小暮さんは、カウンターの上で、手を組んだ。
「でも、この一年で、点が増えた。義父さんがいて、佳澄ちゃんがいて、宮下先生がいて、真弓ちゃんがいて、田口さんがいて、君のお父さんとお母さんがいて、猫が三匹いて。……気がついたら、面になってた。俺ひとりが折れても、もう、簡単には潰れない」
湯気が、二人のあいだで、ゆっくり揺れていた。
「陽菜多ちゃん。ーみっつめの話を、していいですか」
陽菜多の心臓が、大きな音を立てた。
小暮さんは、カウンターの下から、一冊のノートを取り出した。
古い大学ノート。表紙に、丸くて、少し右上がりの字。
〈お店ノート 中原佳子〉
小暮さんは、それを開いて、最後のページの、次のページを見せた。
白紙だったはずのページに、字が書いてあった。下手な、角ばった字だった。
〈すばる荘 二代目のノート
一、朝のコーヒーは、週末だけ。無理をしない。
二、部屋は四つ。三角形の面積を、増やしすぎない。
三、この家の人は、それぞれ自分の名前の仕事を持つこと。
四、カフェオレは、砂糖を入れなくても甘いのが理想(佳子案)。
五、ー〉
五番目は、空白だった。
「五番目は、俺には書けないんだ」
小暮さんは、言った。
「そこはね、この家に来る人が、自分で書くところなんだと思う」
陽菜多の目から、涙がこぼれて、ノートに落ちそうになった。あわてて顔を上げた。
小暮さんが、ノートの間から、小さな箱を取り出した。
あの、不器用な手つきで。
「五十歳が、二十四歳に言うことじゃないって、まだ思ってる。世間は何か言うと思う。君のお父さんに、俺は何ひとつ反論できなかった。……それでも、言います」
小暮さんは、深く息を吸った。
「結婚してください」
そして、四年のあいだ一度も呼ばなかった呼び方で、こう言った。
「ーひなた」
陽菜多は、両手で口を押さえた。
押さえないと、声が出てしまいそうだった。
父が二十四年間、心の中だけで呼んでいた名前。照れくさくて一度も口に出さなかった名前。それを、この人は、どこからか受け取って、いま、目の前で使った。
言葉というのは、人から人へ、二十年も三十年も、旅をする。
そして、旅の終わりに、こういうことをする。
「……はい」
やっと出た声は、みっともなくかすれていた。
「はい。……します。結婚、します」
小暮さんが、笑った。
目尻の皺の、いちばん奥まで届く笑い方だった。それから、その皺のところに、指を当てて、下を向いた。
柱時計が、九時を打った。
あの店から運んできた、十年ぶん、いや、もっとたくさんの時間を刻んできた古い時計の音が、高原の夜に響いた。
陽菜多は、カップを持ち上げて、ひとくち飲んだ。
世界でいちばん、おいしそうに。
カウンターの上で、シリウスが、ゆっくり片目を開けた。
そして、たいへん迷惑そうな顔で、こちらを見た。
四年前、雨宿りで飛び込んだ店で、初めてこの猫に見られたときと、まったく同じ目つきだった。
「……なによ、シリウス。文句あるの」
猫は、答えなかった。かわりに、のそりと立ち上がって、陽菜多の膝に乗った。
重かった。
十六歳の猫は、驚くほど重くて、あたたかかった。
翌朝、陽菜多は、五時に目が覚めた。
窓の外が、少しずつ、よあけ色になっていく。
厨房から、もう、コーヒーの匂いがしていた。あの人は、たぶん一睡もしていない。五十歳が、緊張で眠れなかったのだと思うと、可笑しくて、切なくて、可愛かった。
陽菜多は、そっと食堂に降りていった。
カウンターの端の、指定席。
そこに座って、いつものように言った。
「カフェオレ、ください」
「はい。ーうちのカフェオレはね、時間がかかるよ」
「知ってます」
窓の向こうで、山の稜線が、金色に光り始めた。
たそがれ色と、よあけ色は、絵の具にすればきっと同じ色だ。同じ橙で、同じ薄紫で、同じ金色。
でも、まるで違う。
たそがれ色は、これから暗くなる色。よあけ色は、これから明るくなる色。
ー同じ色なのに、なんて不公平なんだろう、と、二十四歳の陽菜多は、去年の春に思った。
いまは、少し違うことを思う。
あれは、どちらが良いという話ではなかったのだ。
人はたぶん、たそがれ色を何度もくぐって、そのたびに、よあけ色を見つけ直すだけなのだ。あの店を失った日も、救急車を待った二十二分も、廊下で「違います」と答えた日も、全部たそがれ色だった。そして、そのどれもが、朝につながっていた。
恋は、たいてい傘を忘れた日にやって来る。
そして、ほんものの恋はーゆっくり温めた牛乳と同じで、時間をかけた分だけ、甘くなる。
足元で、みゃあ、と声がした。
プロとベテが、順番に、陽菜多の足に体当たりしてきた。しつけの悪さは、完全に親ゆずりである。そのうしろから、灰色の大きな猫が、のそのそとやって来て、当然のような顔で、陽菜多の隣の椅子に飛び乗った。
「はい、お待たせ」
カウンターに、大ぶりの白いカップが置かれた。
湯気の中で、シナモンの星がみっつ、寄り添って光っていた。
窓の外の空は、もう、よあけ色ではなくなっていた。
朝だった。
