御神渡り(おみわたり)

あとがき

 『御神渡り』を最後までお読みくださって、ありがとうございました。

 三十四年ぶりに割れた氷の下から出てきたものを、どう書けば「裁き」ではなく「赦し」に届くのか。書いているあいだ、ずっとそればかり考えていました。読んでくださった方の胸に何か一つでも残っていたら、それだけで十分です。

 さて、明日、十月七日から、新しい長編の連載をこちらで始めます。

 『燠火(おきび)』
 https://www.berrys-cafe.jp/book/n1792228

 二〇〇三年の冬、群馬の鉄工所で起きた放火殺人。死者三名。犯人の息子・湊は名を変えて生き直し、二十二年後、海辺の町でひとりパン屋を営んでいます。その前に現れた二十歳の女性は、父が殺した男の娘でした。

 『御神渡り』と同じく「加害者家族」をめぐる物語ですが、今度は加害者の息子の側から、二十二年という時間を書きました。赦しの物語ではありません。それでも朝は来る、という物語です。

 全十四話・約九万五千字。十月七日から毎日二十一時に一話ずつ更新し、十月二十日に完結します。よろしければ、そちらもお付き合いいただけたら嬉しいです。

 青羽 真
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父は三人を殺した。被害者の娘と、湊はいま同じ屋根の下にいる。  湊は、彼女が誰なのかを最初から知っていた。彼女は、彼が誰なのかを知らなかった。  東京の小さなパン屋で出会った二十歳の戸倉更紗は、湊の父が殺した男の、娘だった。  二〇〇三年十二月十四日。群馬県柏尾市の鉄工所が燃えた。  旋盤工の父・安西邦夫は、社長を殴り殺し、工場に火を放った。火は隣接する社長宅に燃え移り、社長の妻と、七歳の次女が焼け死んだ。死者三名。判決は無期懲役。  残されたのは、母と、十五歳の兄と、八歳の妹だった。  一家は町を捨て、母の旧姓を名乗り、「三堀」という名前で生き直すことになる。──兄だけが、のちにその名を返した。  二十二年後。兄・湊は、千葉の海辺の小さな町でパン屋をひとりでやっている。人を雇わない。写真を持たない。誰にも本当の名字を字で見せない。それでも毎朝二時四十分に起き、窯の灰をかき分けて、その下でまだ赤いものに薪をくべる。  あの日、たまたま祖母の家に泊まっていて生き残ったのが、更紗だった。  そしてもうひとつ。父は服役してから二十年、息子の面会も手紙も、ただの一度も受け取らなかった。  その理由が明かされるのは、父が死んだあとのことである。  加害者家族は、何をどこまで償えばいいのか。  償い終わることのない罪と、人はどう生きていけばいいのか。  赦しの物語ではありません。それでも朝は来る、という物語です。  全十四話・約九万五千字。十月七日より毎日二十一時に一話ずつ更新、十月二十日完結予定。
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