夜を誘惑する華――Jazz singer
自己紹介から初めて、歌連さんの事が少し分った。27歳で身長は164センチ。一見クールに見えて大人びているが、イタズラが好きで笑顔が可愛い女性だ。
少し踏み込んで、いつも歌う曲について聞いてみた。
「あの歌詞は私が作ったオリジナルの曲なの」
――……凄い。綺麗な歌声だけじゃなくて歌詞も作れるんだ。
「忘れられない人になりたい。ずっと想っていて欲しい。そんな思いで制作したんだ」
歌詞を振り返りながら深く考え込んでいると、歌連さんは何か気付いたような顔をしてから慌てるように話し始める。
「私重いかなぁ! そんな……そういう風に想われたいだけだから!! えっと……」
「……フフ。そんな慌てなくても大丈夫ですよ。自分もそう想われたいです」
「……もう笑わないで! 恥ずかしいじゃん」
この日をきっかけに、毎週水曜日に歌い終わると酒を飲みながら話をする関係になった。
半年が過ぎると、最初に出会った時の漠然とした好きは、歌連さんの事を深く知れば知る程に明確な言葉へと変わっていた。
……ただ少し気になる事がある。
最初に出会った時より少しずつ声がかすれているように感じる。気のせいだろう、そんな風に思っていた。だけど……違った。
歌連さんはいつものように歌っていると、段々と声がかすれていき、突然咳き込むとしゃがみ込んだ。
演奏の手を止めて慌てて駆け寄る。
「大丈夫?」
近くで見ると、汗をかいていて顔色も悪く一点を見つめていた。
「えぇ……平気。少し疲れたみたい」
誰が見ても大丈夫には見えない。
この時、一つの違和感に気付く。突然の辛い状態にも関わらず落ち着いている。
まるで何度も経験しているかのように。
演奏を辞めて、椅子まで肩を貸しながら歌連さんを座らせる。マスターは気を利かせ水を用意するとゆっくりと飲ませた。
次第に咳と顔色は良くなり安心する。
歌連さんは申し訳なさそうに謝ると帰ってしまった。
1人で大丈夫か? そう思い聞いたが、大丈夫の一点張りでそれ以上どうこう出来そうになく、心配な気持ちのまま一週間が過ぎた。
演奏をしながら待っていると、いつもの時間には来ず常連も心配をし始める。時間は遅くなり彼女の歌を聴きたい客は店を後にした。
今日は来そうにない。そう思いながらカクテルを飲んでいると、いつもより静かな服装で歌連さんが入って来た。
「ごめんね……心配掛けたよね?」
申し訳なさそうに謝る姿に言葉が出ず「飲もっか」と話題を変えた。
お酒を飲みながら話しをしていても、声はかすれていなかった。安堵をして楽しんでいると、いつもより飲むペースが速い事に気が付く。
「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「今日は飲みたい気分なんだ」
いつもよりどこか雰囲気が甘く感じる。バーの終わる時間が近付いた頃、頬を赤らめながら耳元に近付いて話し掛けられる。
「ウチ来る……?」
少し踏み込んで、いつも歌う曲について聞いてみた。
「あの歌詞は私が作ったオリジナルの曲なの」
――……凄い。綺麗な歌声だけじゃなくて歌詞も作れるんだ。
「忘れられない人になりたい。ずっと想っていて欲しい。そんな思いで制作したんだ」
歌詞を振り返りながら深く考え込んでいると、歌連さんは何か気付いたような顔をしてから慌てるように話し始める。
「私重いかなぁ! そんな……そういう風に想われたいだけだから!! えっと……」
「……フフ。そんな慌てなくても大丈夫ですよ。自分もそう想われたいです」
「……もう笑わないで! 恥ずかしいじゃん」
この日をきっかけに、毎週水曜日に歌い終わると酒を飲みながら話をする関係になった。
半年が過ぎると、最初に出会った時の漠然とした好きは、歌連さんの事を深く知れば知る程に明確な言葉へと変わっていた。
……ただ少し気になる事がある。
最初に出会った時より少しずつ声がかすれているように感じる。気のせいだろう、そんな風に思っていた。だけど……違った。
歌連さんはいつものように歌っていると、段々と声がかすれていき、突然咳き込むとしゃがみ込んだ。
演奏の手を止めて慌てて駆け寄る。
「大丈夫?」
近くで見ると、汗をかいていて顔色も悪く一点を見つめていた。
「えぇ……平気。少し疲れたみたい」
誰が見ても大丈夫には見えない。
この時、一つの違和感に気付く。突然の辛い状態にも関わらず落ち着いている。
まるで何度も経験しているかのように。
演奏を辞めて、椅子まで肩を貸しながら歌連さんを座らせる。マスターは気を利かせ水を用意するとゆっくりと飲ませた。
次第に咳と顔色は良くなり安心する。
歌連さんは申し訳なさそうに謝ると帰ってしまった。
1人で大丈夫か? そう思い聞いたが、大丈夫の一点張りでそれ以上どうこう出来そうになく、心配な気持ちのまま一週間が過ぎた。
演奏をしながら待っていると、いつもの時間には来ず常連も心配をし始める。時間は遅くなり彼女の歌を聴きたい客は店を後にした。
今日は来そうにない。そう思いながらカクテルを飲んでいると、いつもより静かな服装で歌連さんが入って来た。
「ごめんね……心配掛けたよね?」
申し訳なさそうに謝る姿に言葉が出ず「飲もっか」と話題を変えた。
お酒を飲みながら話しをしていても、声はかすれていなかった。安堵をして楽しんでいると、いつもより飲むペースが速い事に気が付く。
「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「今日は飲みたい気分なんだ」
いつもよりどこか雰囲気が甘く感じる。バーの終わる時間が近付いた頃、頬を赤らめながら耳元に近付いて話し掛けられる。
「ウチ来る……?」