夜を誘惑する華――Jazz singer

第2話 心を奪う生演奏

 あの夜以来、ジャズに興味を持って沢山聴いた。
 それでも、あの夜に聴いたスミレの曲を超えることは出来ない――まるで支配に近いと感じる程に、執着しているみたいだった。

 ただ、ジャズが好きになったのは変わらない。そんな時、生演奏を聴いてみたいと、ふと思い検索をすることに……。

 どうやら、近くにあるらしい。名前は、Cats that gather at night(夜に集まる猫たち)というジャズバーだ――……行ってみようかなぁ

 ◇◇◇

 そこは、歓楽街の人通りが少なさそうな、袋小路の奥に目的地の場所があった。街灯の一つもない道だが、遠くからでも見える、青色のネオンサインの看板が目に入る。可愛らしい2匹の猫のオブジェがある扉を、期待を胸に開いた。

 歓迎するようにベルの音が鳴ると、ジャズの心地良い音色が広がってくる。まだ始まっていないのか、ステージには人が居ない。だけど、楽しそうにジャズを嗜《たしな》みながらカクテルを飲んでいる人で賑わっていた。

 周りを見渡していると、バーテンダーの人が近づいてくる。
「いらっしゃい。初めてよね、ようこそ」

 私があたふたしていると、優しく微笑みながら手招きをする。
「フフ。こっちにおいで」

 カウンター席に案内をされると、説明を始めた。
「私の事は、ママかネコでも好きに呼んでちょうだい。初めての人には一杯無料でサービスしているのだけど、良かったら飲んでかない?」

「ありがとうございます。あの……ジャズの生演奏が見れるって書いてあったので来たんですけど、本日はお休みですか?」

 メニュー表を渡しながら、笑顔で伝える。
「もう少し時間が経ったら始まるわよ。お店が開いている日は毎日見られるから、気にいったらいつでもおいで」

 感謝を伝えると、お酒を選び始める。でも、20才になったばかりでどれがいいか分からない。そこで、綺麗な黄色をしている、甘口のカクテルを選んでみた。

「ファジーネーブルでお願いします……」

 コリンズグラス(背の高い細長いグラス)に氷を入れ、メジャーカップ(測り)にピーチリキュールを測ってグラスに入れる。オレンジジュースを流し入れると、バースプーンを使いステア(整える)をした。最後に可愛く切られた小さいオレンジをグラスに付けて完成した。

 目の前に置かれた綺麗なビジュアルに心を引かれて、グラスをゆっくり近づける。桃の甘い香りにオレンジが加わることで、爽やかな香りが優しく包み込むようだ。

 ゴクッと味わいながら少し飲む。
 桃の甘みとオレンジの酸味が加わり、深いフルーティーな味わいがたまらない。非常に飲みやすくて……甘い誘惑に舌が惚れるように感じる。

「凄く美味しいです」
「あら嬉しい。ありがとう」

 流れているジャズの音楽を聴きながら、カクテルをゆっくり味わっていると、ネコがゆっくりと近づいて、こっそり耳打ちをする。

「後5分後に、ステージが始まるお知らせをするから、今なら前の席に座れば近くで見れるわよ」

 感謝を伝えると、嬉しそうに微笑んだ。私は期待を胸に前の真ん中の席に座り待つ。アナウンスが入ると、お客さんがステージの周りに集まった。
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