**confection**
「みんなもそろそろ起こさないとね」
やれやれ、と言ったような表情には、優しい笑みが浮かぶ。
どうしようか。
気持ちが溢れて止まらない。
気持ちを伝えたい。
立ち上がりかけたももの腕を、ほとんど無意識に掴んでいた。
力加減を間違えてしまったら、簡単に折ってしまえそうな程華奢な腕に一瞬驚く。
でも、そんな意識はすぐにどこか隅へと追いやられ、俺に向けられた大きな瞳に釘付けになった。
胸につっかえている二文字が、喉から飛び出してきそうだ。
不思議そうな、驚いたような顔をするももから、目が離せない。
「…るぅ?」
ももの唇から漏れる自分の名前。
そんな事にすら、胸が震えるようだ。
「どう…したの…?」
思わずハッとして、慌てて手を離す。
思いもしなかった自分の行動に、内心自分でも驚いた。
「いや、なんでもない」
うまい言い訳も思い付かずに、不自然に目をそらす。
俺を見るももの瞳に、全てを見透かされてしまいそうな気がして、思わず目を伏せたのだ。
やべェ……俺、末期かも。
「…悪い。気にしないでくれ」
クシャリと前髪を握り混み、溜め息を吐いた。
自分のこの感情を、どこに持って行けばいいのかも分からずに、モヤモヤと嫌な感覚で胸がいっぱいになる。
「うん…大丈夫だけど……大丈夫?」
「ん…酔いが冷めてねえのかもな」
本当はももにぶつけたくて仕方ないのに、それができない自分に溜め息を吐いた。
いい加減、気持ちを決めなきゃな……。
そんな思いを吐き出すように。