**confection**
テーブルに置いてあった飲みかけのミネラルウォーターを、奪うようにして手にすると、勢いよく傾けた。
少し温いが、体中に染み入るように広がっていく。
俺はどうしたいんだ。
好きと自覚してから、なんども自問自答した課題。
気持ちを伝えたい。
そして、出された結論。
さらにそこから、「でも」から始まる俺の言い訳。
結果、エンドレス。
ももを見ていると、気持ちが和む。
一緒に居るだけで、胸が痛いくらいに苦しくなる。
言葉を交わすと、素直になれずに口を噤んでしまう。
笑顔を見せられると、思い切り抱き締めて壊してしまいたくなる。
こんな気持ちも、こんな事思ったのも、初めてだ。
ももが、全部初めてなんだ……。
「るぅ…?ホントに大丈夫?」
大きな瞳が、心配そうに睫毛を揺らす。
俺は卑怯者だ。卑怯で姑息で、酷い男なんだ。
ももの澄んだ瞳に見つめられると、全てを見透かされてしまいそうで。
「あぁ…本当に大丈夫だから」
「そお?…ならいいけど」
なんだか納得できないような顔をしながらも、ももは渋々といったように目を伏せる。
素直だけど…素直じゃないもも。
自分の事になると、頑なに口を閉ざして開こうともしない。
俺はそんなももの心を、癒やしてやれる存在にはなれないのだろうか。
「……ん…あれ…?寝ちまった…」
そんな考えを中断させるように、宗太が目を覚ます。
即席でできあがった2人きりの空間は、これで時間切れとなってしまった。