**confection**
短髪で、日に当たって淡く茶色く染まり、切れ長の目は穏やかに細められている。
少し着崩した制服に、3年の学年色でもある青い上履き。(と言ってもスリッパ?)
…嫌なモン見ちまった。
あんな優しい目でももを見つめている姿を見たせいか、胸が痛くなる。
すぐに分かる。
完璧に愛の告白だ。
「誰だっけ…見た事ある」
「だよな〜。誰だろう?」
そんな会話を受け流しながら、俺はももから目が離せなかった。
少しも見逃さないよう、でも確実に動揺しているせいか、視線が揺らぐ。
気持ちは焦るばかり。
でも、体は固まってしまったように、その場から動けない。
なにも出来ない事が、歯痒くてたまらない。
俺は、見ているしかできねえんだ。
「あー!!分かった!!生徒会の人!!」
その時、美春の声に思わず目を見開いた。
確かに、人を覚えない俺でも見覚えがあった。
初めての全校集会の時に、挨拶してた奴だ。
「あぁ〜…そうだそうだ!!なに?会長?副会長?書記?なに?」
「あれ会長じゃなかったか?」
龍雅と宗太の顔を見比べながら、俺も記憶を遡ってみる。
でも、俺が覚えてる訳なかった。
全校集会なんてテキトーに流してただけだし、どうやらそれはみんなも同じらしい。
全員の顔に、?が浮かんでいるように思えた。